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映画『ウォールフラワー』の解説(ネタバレ有)未熟で複雑な登場人物達の成長を描いた青春映画

映画ウォールフラワー

ウォールフラワー
画像引用元:ⓒSummit Entertainment

2012年公開青春映画。
監督・脚本は原作者のスティーブン・チョボスキー。
エマ・ワトソンもチャーリーが惹かれる女性・サム役をとても魅力的に演じています。

チャーリーとサムの関係から、恋愛映画とも思ってしまいそうになりますが、これは未熟で複雑・心に深い傷を持った主人公・チャーリーが過去と向き合い、乗り越えて成長していく青春映画です。

「ウォールフラワー」とは、直訳すると「壁の花」という意味で、ダンスパーティーなどで踊りに参加できずに傍観者になっているはみ出し者、という意味を指します。

1999年に発表された小説『ウォールフラワー』は、一部の若者たちの間でカルト的な人気を博し、『ライ麦畑でつかまえて』の再来とも言われていました。

長く資金集めで苦労していましたが、エマ・ワトソンの協力もあって映画化した作品です。

映画『ウォールフラワー』のヒーローズ・ジャーニー

それでは、ヒーローズ・ジャーニーを見ながら研究していきましょう。
「ヒーローズ・ジャーニーって何?」いう方はこちらの記事をどうぞ!!

ヒーローズ・ジャーニー
『ヒーローズ・ジャーニー』とは。映画研究の準備こんにちは。 akira(アキラ)です。 今回の『movie labo』は前回に引き続き導入編です。 https://ku...

日常世界/賢者との出会い

映画ウォールフラワー
画像引用元:ⓒSummit Entertainment

主人公・チャーリーの高校生活が始まる。周囲になじめず友達もできない。
上級生のパトリックはユーモアがあり周囲への優しさを持っている。両親や姉も優しいが、心配させてしまうと思い自分の悩みは打ち明けられない。過去にも同じようなことで不安にさせてしまったようだ。叔母のヘレンは別のようだが。
薬を飲んで自分を保つチャーリー。

国語教師のアンダーソン(賢者)と出会う。チャーリーの知識に一目置くが、消極的な性格を指摘する。

冒険への誘い

高校のアメフトを観戦しているチャーリー。
同じく観客席にいたパトリックを見つけ、話しかける。そしてパトリックの義妹・サムと知り合う。

冒険の拒否

映画ウォールフラワー
画像引用元:ⓒSummit Entertainment

ダイナーで楽しい時間を過ごすが、学校でも会えるかと素直に聞けないチャーリー。
パトリックとサムは去っていく。

戸口の通過

映画ウォールフラワー
画像引用元:ⓒSummit Entertainment

卒業生歓迎会。
パトリックとサムとともに、ダンスに参加するチャーリー。アフターパーティーにも連れて行ってもらう。ハイになってしまうチャーリーだが、持ち前のユーモアを示し周囲を笑わせる。

昨年チャーリーの親友の自殺を知ったパトリックとサム、チャーリーのことをみなに紹介し、仲間にいれる。

試練、仲間、敵

サムには彼氏・クレイグがいるが、チャーリーはサムにふさわしい人ではないと思っている。

チャーリーはアンダーソンに「なぜ優しい人は間違った相手とデートをするのか?」と尋ね、「自分に見合うと思うかだ」と教えてもらう。そして「自身の価値を教えてあげればいい」と助言をもらう。

最も危険な場所への接近

映画ウォールフラワー
画像引用元:ⓒSummit Entertainment

サムの大学適正試験に向け、勉強を手伝うチャーリー。サムは見事合格点を取り、お礼にチャーリーにタイプライターをプレゼントする。
自身のつらい過去を告白するサム。そしてチャーリーのファーストキスの相手をする。

最大の試練

サムはクレイグと付き合い続け、意気消沈するチャーリー。
大雪の中、外で倒れこみ、ヘレンとの秘密、ヘレンの事故死を思い出す。

報酬

メアリーと付き合うことになってしまったチャーリー。
しかしメアリーを傷つけるように別れてしまう。サムやパトリック達の怒りも買ってしまい、孤立してしまう。

帰路

パトリックの喧嘩を止めるチャーリー。メアリーにも謝り、再びみなと仲間になる。

卒業式の夜、チャーリーは自分の思いをサムに伝え、二人は愛し合う。アンダーソンはチャーリーに作家の素質があると伝え、来年も課題を出すと約束する。

サムとパトリックが大学進学のため、引っ越していく。

サムとの別れ・悲しい気持ちが止められないチャーリー。ヘレンの性的虐待と、自分はヘレンの死を望んでいたことを思い出す。

そして自殺を図る。

復活/宝を持っての帰還

入院生活の中でヘレンとの過去を告白し、徐々に回復していくチャーリー。

チャーリーは大切な人が苦しんでいるのに何もできない自分の無力さを感じていた。だからこそヘレンの行為を秘密にして我慢していた。チャーリーは医師を通じて両親にヘレンとの秘密を話し、周囲とも打ち解けるようになっている。兄・姉、サムとパトリックもチャーリーを思い、訪れてくれる。

チャーリーは今を生きていることを実感し、自分の可能性を感じている。

映画『ウォールフラワー』のテーマ

 

なぜ優しい人は
自分を傷つけてまで相手を想ってしまうのか?

 

これが映画を貫くテーマです。
この映画には悪い人は出てこず、優しい人ばかりです。

が、その優しさゆえに嘘をつき、気持ちを隠し、自分を傷つけています。

映画『ウォールフラワー』をさらに詳しく

「ヒーローズ・ジャーニー」ともう一つ大切だった「三幕構成」にについて詳しくしてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニングはタイプライターの音から入り、クレジットはタイプライターの文字です。
この演出で、なにか文学を扱った映画なんだと直感します。

夜の街を駆け抜ける車の、おそらく荷台から後方を見る映像。なにを示しているのでしょうか。
アコースティックギターの青春を予感させる曲が始まります。
映画のトーンや題材がゆっくりと無意識のうちに刷り込まれていきます。

主人公・チャーリーは、背中越しにガラスに移った顔で登場します。
ガラスに映ることで、本当のチャーリーとはまだ会えていないことを表します。

音楽や演出などはシナリオに描かれませんが、気づいたことは積極的に書いています。

トモダチへの手紙を朗読することで、チャーリーの高校生活の初日の様子がわかっていきます。後にトモダチとは、昨年自殺したチャーリーの親友・マイケルとわかります。

映画では「説明すること」が必須なのですが、説明のシーンやセリフは退屈になりがちです。

しかしここでは「映画の中の第三者に教えることで、同時に観客にも教える」という手法をとることで、自然に状況を理解できます。

自分の正直な気持ちを伝える手段に文字を使っていることで、彼の作家の素質を表しています。

アンダーソンとの出会いのシーン。
誰も知らない知識をチャーリーだけが知っている。だけど発言はしない。だけどノートには示す。
短いシーンだけでチャーリーの知識量と、消極的な性格、文字で表現する、などのチャーリーの性格や特徴がわかります。もしかしたらアンダーソンにだけ見えるように書いたのかもしれません。

さらにチャーリーはまだ書きたいものがないと話すことで、未熟さも感じます。

同じようにパトリックも、ユーモアを持った新入生の気づかいのできる上級生、と短いワンシーンで示しています。

手紙の締めくくりで、「両親には正直なことが言えない。しかしヘレンには言える」と伝えることで、ヘレンがチャーリーにとって特別な存在だと印象付けています。

そして「友達をつくりたい」。
チャーリーの外的な目標が設定されました。
ここまでおよそ9分。
この後の物語において重要な要素はすべて説明され、ここから物語が始まっていきます。

アメフトの試合。
チャーリーが勇気を出してパトリックに話しかけたことで、サムと出会います。

サムのアップとスタジアムの照明を利用した後光のようなライトアップ。
このシーンは、チャーリーが一目惚れしをしてしまった事を視覚的に伝えています。

自分からパトリックに話しかけたことで得たものです。物語の「きっかけ」ともいえるシーンです。
しかし、別れ際にチャーリーの声が届かないことで、まだサムたちの世界には入りきれていないと表現しています。

姉・キャンディスとデレクの喧嘩のシーン。
チャーリーは殴られたキャンディスを守るために立ち向かう勇気を持っていますが、キャンディスには頼られていないことがわかります。

そしてデレクをヘレンの彼氏のようだと話し、さりげなくヘレンについてわかります。

卒業生歓迎会でも、自分からダンスに参加するチャーリー。
その結果アフターパーティーに連れていかれ、パトリックやサムたちの世界に飛び込んでいきます。

ここは第一ターニングポイントととらえます。
映画が始まって27分。全体の4分の1ですね。

このシーンでも、サムとの会話を通じてマイケルの自殺がわかります。
手紙と同じ第三者に説明することで知る手法と同じですね。

そして伏線となる重要なトンネルのシーン。
チャーリーはサムのようなことがまだできませんが、この「特別な世界」は自分を変えてくれそうだと直感しています。

駆け抜ける、疾走する、などは青春映画の必須項目ですね。

第二幕

ロッキーホラーショーは映画の遊びでもあり、エロティックなショーなので青春映画とつながりが良いです。

その後のパーティーで、試験の結果に悩むサラとのシーン。
サラと勉強の手助けができる、さらにテープを渡し、好印象を与えたと思ったら、サラは大学での運命の出会いを夢見ていることを話し、チャーリーは暗に恋愛対象ではないと告げられます。

このようにワンシーンの中で喜びから悲しみへと起伏をつけると面白いシーンになります。

さらに畳みかけるようにクレイグが登場。
音楽のチョイスといかにもなセリフで大したことのない男だと感じさせます。

そんなチャーリーはアンダーソンに「なぜ優しい人は間違った相手とデートを?」と尋ね、アンダーソンは答えと助言を返します。賢者としての役割ですね。

チャーリーはサムのために勉強を手伝い、徐々に二人の距離は近づきます。

サムの部屋に入り、お互いに自分の辛い過去を話します。深い仲になっている証拠です。そしてファーストキスもしますが、それでもサムには届きません。

悲しみに落ちてしまうと、ヘレンの記憶がよみがえってきます。
そしてヘレンの事故のシーンと、雪の中で倒れるチャーリー。
55分。
ほぼ映画の半分の時点で、ヘレンの死という「最大の試練」がチャーリーを襲います。

その後メアリーと付き合いますが、これは間違った宝です。
そしてメアリーと最悪の方法で別れ、サムも怒らせてしまい、チャーリーはすべてを失います。

ダンスパーティーではサムが「ウォールフラワー」になっており、反復のシーンになっています。
この時のトモダチへの手紙をあえて読まないことで、チャーリーが追いつめられていることを強調してます。

カフェテリアでのパトリックとブラッドの乱闘のシーン。
チャーリーのパトリックを救いたいという気持ちと、暴力性のある心の闇を描いています。

しかし、結果的にブラッドも救うことになります。
ブラッドも自分の気持ちに正直になれず、あの態度をとってしまっていたのでしょう。
彼も優しいがゆえに間違った仲間とつるんでしまった人なのです。

そしてサムやメアリーとも仲直りし、「宝」を再び手に入れます。

喧嘩のシーンが73分。
これが第二ターニングポイントです。

第三幕

パトリックとのキスシーン。
キスだけで終わるとパトリックとの関係を処理するシーンなどを作らないといけなくなりますが、シーンの中でパトリックがすぐに謝ることで、無駄にシーンを使わなくて済みます。

その後チャーリーはサムに思いを告げ、サムと愛し合います。
しかし、サムとの別れには耐えられません。

クライマックス。
精神のどん底に落ち、ヘレンの記憶が再び襲い掛かります。

直接的な描写はありませんが、ヘレンはチャーリーに性的虐待をしていました。
そしてチャーリーはヘレンの死を望んでしまったのです。

チャーリーは優しい人間です。
ヘレンもヘレンの彼氏から暴力を受けていたことを知っており、自分への行為もその影響だと思いヘレンを敵視することができません。

嫌いになれずむしろ大好きなヘレンなのに、ヘレンの死を望んでしまった。
「自分のせいで死んだ」という思い込みが、チャーリーの「最大の敵」と言えます。

他人より自分を優先してしまった結果死を招いたので、チャーリーは自分の本心が言えなくなってしまったのです。

チャーリーの誕生日プレゼントを買う時に死ぬことで、さらにチャーリーを追いつめるように強調されています。

そしてカットが重なり、包丁が自殺を示唆し、高まっていきます。

しかしこの一年でチャーリーは本当の自分の気持ちや考えを出せるように成長し、助けてくれる仲間を手に入れました。
みずから治療に積極的になり、ヘレンについて告白します。

大切な人が苦しむ姿の幻覚を見ていました。
自分の無力さを感じていたのです。

ですが、映画の中ですでにサムやパトリックを助けているので、「最大の敵」も乗り越えます。

パトリックとサムがチャーリーの家を訪れます。
もう「特別な世界」に行かなくても仲間がいることを表します。

最後の手紙。
トモダチはマイケルだとわかり、もう手紙を書かないと告げています。これは過去との決別を示します。

ラストシーン。
チャーリーは荷台に乗り、トンネルを駆け抜けていきます。

オープニングでは後方を見ていましたが、ここでは前を見て駆け抜けていくチャーリーを見届けます。
後方は過去を示し、前方は未来を意味しています。

最初後ろを見ていたチャーリーがサムとのキスで前を向く、という動きが映画のすべてを表しているように思えます。

過去を変えることはできませんが、それでも仲間や愛する人と今を生きるようにチャーリーは成長し、人の無限の可能性に気づき映画は終わります。

さいごに

『ウォールフラワー』を研究してみて、順序は違えど12の段階を踏んでいました。
そして内的な旅・チャーリーのトラウマを、外的な旅・サムやパトリックたちとの関わりで乗り越えるという構造でした。

『ウォールフラワー』はワンシーンワンカットごとに意味やアイディアを感じる映画なので、何度見ても新しい発見がある作品です。

次回は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の研究です。

それではまた次回。

– fin –

ABOUT ME
akira
akira
1990年生まれ。SNSとは無縁の人。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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