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映画『羊たちの沈黙』の解説(ネタバレ有)主人公・レクター博士の凶行・犯人の動機…全てに通ずる一つのキーワードとは

羊たちの沈黙

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第54回の movie labo はU-NEXTで配信中の羊たちの沈黙』。

1991年公開のサイコスリラー映画。
監督ジョナサン・デミ、脚本テッド・タリー。118分。

第64回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞など主要5部門を受賞。
これは『或る夜の出来事』『カッコーの巣の上で』に次ぐ3作目の快挙でした。

最初に原作権を買ったのはジーン・ハックマン。
しかし脚本が暴力的であることを理由に降板し権利も放棄。それをオライオン・ピクチャーが買いました。

レクター博士を演じるアンソニー・ホプキンスは、わずか12分の出演時間にもかかわらず受賞。
もともとスタジオ側はショーン・コネリーを希望していたようですが、コネリーが拒否したため二番手のホプキンスになったようです。
同じく主演のジョディ・フォスターも、監督はミシェル・ファイファーを希望していましたが拒否されたため役を得ました。

果たして両者とも第一希望になっていたらどんな評価になっていたのか……トラブルが結果的に良くなるかもしれないことも映画が面白いところですね。

映画『羊たちの沈黙』のヒーローズ・ジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

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ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

羊たちの沈黙』は、『U-NEXT』で無料視聴ができます。

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※この記事の情報は、2021年10月時点のものです。
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日常世界

FBIの訓練生のクラリス。
世間では女性を殺し皮をはぐバッファロー・ビルの連続殺人事件が起きている。

冒険への誘い

上司のクロフォードがクラリスに、連続殺人犯の心理分析のためにハンニバル・レクターとの面会を頼む。殺した人の肉を食らう凶悪な殺人鬼だ。

冒険の拒否/賢者との出会い

精神病院で厳重に隔離されているレクターに会うクラリスだが、レクターは協力しようとしない。しかしクラリスはレクターからチャンスを与えてもらう。

戸口の通過

チャンスを生かし、レクターがかつて殺した死体を見つけるクラリス。レクターがバッファロー・ビルの犯人逮捕に協力する。

試練、仲間、敵

ビルが新たな女性を拉致・監禁する。クロフォードとともに新たな犠牲者の死体を調べに向かうクラリス。死体は皮が剥がされ、喉には珍しい蛾の繭が入れられていた。

拉致された女性は議員の娘・キャサリンだと判明する。

最も危険な場所への接近

レクターに議員とキャサリンを救えたら景色の見える施設に移す約束をしたと話すクラリス。レクターはクラリスのトラウマの話との引き換えに情報を与える。

最大の試練/報酬

病院院長の策略でクラリスの話が嘘と聞くレクター。院長は正式に議員を取引をする。協力するレクターは病院から裁判所に移送され、議員に犯人の情報を与える。

クラリスが面会にやってきて、犯人の情報は偽物だと突き止める。

レクターはクラリスのトラウマの全てを聞き出し、代わりにビルの資料を返す。

帰路

裁判所から逃走するレクター。クラリスはレクターの情報を思い出しながら資料を見返し、犯人は最初の犠牲者の友人と気づく。

最初の犠牲者の家を訪れ、犯人は女性の皮でドレスを作ろうとしていると予測しクロフォードに伝えるが、クロフォードは別の容疑者を見つけたと伝える。

復活

クロフォードの計画は失敗。聞き込みを続けていたクラリス。ビルの家を訪れ、蛾を見つける。ビルと対決し、撃ち殺すクラリス。

宝を持って帰還

キャサリンは救出され、クラリスはFBIの学校を卒業する。レクターはクラリスに別れを告げ、院長を夕食に誘う。

映画『羊たちの沈黙』のテーマ

クラリスは幼少期の子羊の悲鳴というトラウマからの脱却。
この子羊の悲鳴は、自分の無力さ・殺される運命なのに逃げようとしない、逃れられない。殺される立場の弱い自分などなど様々な解釈があると思いますが、どちらにせよクラリスの弱点であることは間違いありません。そしてそれを乗り越えることが映画の中での主人公の変化です。
内的なゴールの達成ですね。

犯人のバッファロー・ビルは女性になりたかった。
変身・変化です。

劇中にあるように『蛾』のモチーフも変化。

レクター博士のキャラクターは全く変化しませんが、裁判所から逃げていく際殺した警官の顔の皮を被り変装。つまり変化していました。

全ての主要なキャラクターが

変化

というテーマに繋がっています。

そしてもう一つ、エレベーターの中で男たちに囲まれるクラリス、ランニング中に振り向かれるクラリスなど、クラリスは常に男たちに見られ続けています。男性社会の警察組織の中にいる美しい女性。

女性蔑視』もテーマの一つです。

映画『羊たちの沈黙』をさらに詳しく

『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
ランニングトレーニングをしているクラリス。

おどろおどろしい音楽とともに汗だくになって走るクラリス。辛い訓練ですが、どこか何かに追いかけられているような印象を与えます。

クラリスを呼ぶスタッフの帽子でFBI関連であることが説明されます。

木に打ち付けてある教訓は訓練を意味しているだけでなく、クラリスのトラウマも指しています。

クロフォードにハンニバル・レクターとの面会を頼まれるクラリス。

クラリスがレクターに会う前にクロフォードとチルトンからレクターの情報を説明される形で同時に観客にも説明されます。

レクターが登場する前に彼に関する話を色々な立場の人・視点が話す。

レクターというキャラクターを様々な角度からまるでスポットライトを浴びせて浮かび上がられるように表現する、というイメージですね。

登場していないにもかかわらずレクターの想像がどんどんふくらんでいきます。

レクターに襲われた看護婦の写真を見せないところも想像を掻き立てますね。見せる瞬間、照明も赤くさせて恐怖のイメージを与えています。

そしてクラリスに関わる男たちは皆クラリスを口説く。これも「女性蔑視」のテーマを表しています。

そしてどの男たちも役に立たない。クロフォードの突入は失敗、チルトンはずる賢い、貸倉庫では運転手は手伝わないなどなど。面白いですね。

チルトンの説明は移動しながらすることでシーンに動きをつけています。

レクターと面会するクラリス。

凶悪な殺人犯なのに紳士的な振る舞い。ギャップが素晴らしいキャラクターを作り上げています。

レクターのアップが続くのも強烈な印象を与えますね。

クラリスの回想。回想を呼び寄せるきっかけに過去と現在の動きをシンクロさせると観客もすんなりとわかりますね。車に近づくだけでは流石に弱い気がしますが。

クラリスの突入訓練。失敗していますが、これはラストのビルとの対決の伏線です。

まだ未熟だとわかるので、クライマックスの緊張感がより高めてくれます。

レクターがビル逮捕に協力してくれる。これが第一ターニングポイントです。

レクターはクラリスのトラウマを見つけるだけでなく、相棒の立場でもあります。

第二幕

ベンジャミンの死体を見つけさせるなど、もうすでにレクターはバッファロー・ビルの本質に気づいているようですね。

先に犯人に気づいているなど、情報を多く知っているレクターは他のキャラクターや観客よりも上の立場に立っています。

遺体発見現場に向かうクラリス。保安官に囲まれる、クラリスの回想など話を進めながらテーマに関するシーンを作っています。

虫の繭、ダイヤ型に切り取られた皮など手がかりを得ていきます。

博物館でも口説かれるクラリス。

犯人が拉致した女性は議員の娘だった。ものすごい偶然ですが、事態がより悪化する偶然なので観客は受け入れます。

クラリスのトラウマと引き換えにバッファロー・ビルの情報を得る。

ストーリーを進めると同時にクラリスは危険へと進んでいく。素晴らしいアイディアですね。

クラリス、レクター博士と面会、バッファロービルの視点とバランスよくシーンが並べられています。

物語の中盤に差し掛かり、チルトンの計画で事態がより複雑になっていきます。

チルトンの行動もクラリスがチルトンの怒りを買ったりプライドの高いキャラクターだったりとしっかりと根拠が説明されています。

裁判所でのクラリスとレクターのシーン。

クラリスはビルの情報を得たい。レクターはクラリスのトラウマが知りたい。

それぞれ目的があり、お互いにそれを得るために言葉の戦いをします。

クラリスが絵を渡しますが、これは交渉を有利にするための小道具です。何がなんでも聞き出したいと焦るクラリスですが、レクターはトラウマを聞き出したいのでお互いに引きません。ついに降参しトラウマを話し始めるクラリス。このシーンの第一ターニングポイントです。

最初は檻越しに見えたレクターですが、顔のアップになっていき次第に檻が見えなくなる。逆にクラリスが子羊の悲鳴を話す時は檻越しであり、まるでクラリスが檻の中にいるような画面になっています。

檻の中と外、立場が逆転していることを映像でも表していますね。

情報が得られると思ったところでチルトンが乱入。これが第二ターニングポイント。

クラリスVSレクターにクラリスVSチルトンも混ざってきます。

そしてシーンの最後。クラリスがチルトンに勝ちビルの資料を受け取る。レクターが渡す際の指で触る行為は、キスの代わり。

レクターの好意・愛を表現でもあり、凶暴なレクターが見せた優しい素振りというギャップも生み出しています。

レクターが脱走する一連のシーンは圧巻。エレベーターから死体が落ちてきたり、救急車の中でレクターが皮を剥がす時など、終わり際の切れ味が抜群です。

クラリスがレクターからもらったビルの資料を元にバッファロー・ビルの居場所に気づき向かう。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

ドレスに使われたダイヤ型の生地・白人の一軒家・蛾・暗視スコープなどの伏線を回収し、ビルを見つけ対決。

そして勝利・事件は解決します。

蝶のオブジェクトも見せるなど、最後までテーマである変化を表現し続けました。

さいごに

バッファロー・ビルも猟奇的な殺人犯であるにもかかわらず、それが隠れるほどのレクター博士の存在感。特に裁判所でのクラリスとの会話のシーンは凄いです……素晴らしい映画でした!

次回はNetflix、U-NEXTで配信中の『スクール・オブ・ロック』を研究します。

ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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