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映画『セブン(SE7EN)』の研究(ネタバレ有)王道を唯一無二の傑作に押し上げた「7つの大罪」というモチーフ

映画セブン(se7en)

映画セブン(se7en)画像引用元:ⓒ NewLineCinema

1995年公開のサイコ・サスペンス。監督デヴィッド・フィンチャー、脚本アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー。127分。
当時タワレコ店員だったアンドリューが、働きながら数年をかけて書き上げたオリジナル脚本です。

定年間近のベテラン刑事が、若く野心溢れる新米刑事とタッグを組み、難事件を解決する。

主に新米刑事目線で語られることの多い王道のバディもので、この映画の場合はベテラン刑事・サマセット目線ですが、同じ軌跡を辿って描かれています。

王道、悪く言えばよくある話・ベタと言えます。

そのよくある話でありながら「セブン」を見たこともない映画に変えた最大の要素が、タイトルにある通り「7つの大罪」というモチーフです。

ストーリー、テーマ、モチーフと言葉がありますが、ストーリーはエピソードの順番、テーマは映画が伝えたいこと、モチーフはそれらを表すための道具と思えば良いと思います。

映画『セブン(SE7EN)』のヒーローズ・ジャーニー

それでは今回もヒーローズ・ジャーニーを見ながら研究していきましょう。
「ヒーローズ・ジャーニーって何?」いう方はこちらの記事をどうぞ!!

ヒーローズ・ジャーニー
映画研究の準備、12の段階『ヒーローズ・ジャーニー』とはこんにちは。 『kurashicreate』のキュレーターakira(アキラ)です。 今回の『movie labo』は前回に引き...

日常世界

ニューヨーク。
あと7日で定年を迎え、退職する殺人課の刑事・サマセット。事件を起こした夫婦の子どもを気遣うサマセットだが、仲間からは疎まれている。
新たに配属された若い刑事・ミルズと出会う。ミルズは愛する妻・トレーシーとともにやってきた。

冒険へのいざない

映画セブン(se7en)画像引用元:ⓒ NewLineCinema

スパゲッティを死ぬまで食べ続けられた肥満男の死体が発見される。

冒険の拒否

映画セブン(se7en)画像引用元:ⓒ NewLineCinema

底知れない事件になると予感するサマセット。
さらに凄惨な事件が起き、弁護士が殺される。現場には血で「強欲」の文字が残されている。
サマセットは肥満男の現場を再び訪れ、「大食」の文字を見つける。
「7つの大罪」をモチーフにした連続殺人事件だと気づいたサマセット。あと5つの事件が起きると推測し、担当につくことを断り、ミルズを勧める。ミルズはやる気だ。

賢者との出会い

図書館に向かい、「7つの大罪」に関わる資料を集め、ミルズに渡すサマセット。

戸口の通過

トレーシーに招待され、サマセットはミルズらと夕食を共にする。
ミルズとサマセットは事件について振り返り、手がかりを見つける。

試練、仲間、敵

弁護士の部屋に残された指紋からビクターという男を突き止め、SWATとともに家に向かう。
しかしビクターは薬漬けの廃人となっていた。現場には「怠惰」の文字。
カメラマンに写真を撮られ激昂するミルズ。
トレーシーの相談に乗るサマセット。トレーシーは街に馴染めず、妊娠したことをミルズに言えないでいた。
サマセットもかつて自分の子を堕ろさせたことを告白し、トレーシーを励ます。

最も危険な場所への接近

サマセットのFBIのコネを使い、ジョン・ドゥという男が浮上する。

最大の試練

ジョンの家を訪れるなり、ジョンに発砲される。
追いかける2人だが、ミルズが反撃され銃を突きつけられる。
しかし去っていくジョン。

報酬

ジョンの家を捜索する警察。ジョンはミルズの写真を撮ったカメラマンだった。
しかし手がかりはつかめず、「肉欲」「高慢」の殺人事件が起きる。

帰路

血まみれのジョンが警察署に自首してくる。逮捕するミルズ。
罪を認める代わりに、残り2つの死体の隠し場所にサマセットとミルズを連れて行くと取り引きを持ちかけるジョン。
受け入れるサマセットとミルズ。

復活

映画セブン(se7en)画像引用元:ⓒ NewLineCinema

2人を荒野に連れて行くジョン。
運送屋がやってきて、荷物を渡す。中身はトレーシーの首であった。
「嫉妬」の罪を犯したと話すジョン。「憤怒」にかられたミルズは、ジョンを射殺する。

宝を持って帰還

ミルズは逮捕された。
サマセットは酷い世の中と再び闘うことを決意する。

 

『セブン(SE7EN)』のテーマ

主人公・サマセット、悪役・ジョン。

刑事と殺人鬼。二人は相いれないキャラクターのように思えますが、実は同じ思想を持っています。

劇中、サマセットが昨日起きた救いようのない事件を話し、路上の事件を目撃する、というようなシーンがあります。ジョンも世の中に説教するために事件を起こしました。

 

酷い世の中に対して、どうするか?

 

このテーマが二人の考えの底にあります。

ジョンは事件を起こしました。
サマセットは絶望し、付き合いきれないと刑事を引退しようとしています。路上で目撃した事件も、逃げるようにタクシーを走らせます。

そんなサマセットは、映画のラストにどうなっているでしょうか。

 

『セブン(SE7EN)』をさらに詳しく

「ヒーローズ・ジャーニー」ともう一つ大切な要素「三幕構成」について詳しくしてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。朝。サマセットが出勤の準備をしています。
小道具の扱いでサマセットが几帳面な性格の持ち主だとわかりますね。

殺人現場を訪れるサマセット。
事件を起こした夫婦の子どもを気にするが、ほかの刑事から疎まれます。そしてミルズと出会いますが、二人は衝突します。

「7日間おとなしく見ていればいい」とサマセットは言います。

主人公の職業を説明する簡単な方法は、仕事中を見せることです。

警察署で挨拶して現場に行くよりも、いきなり殺人現場から入るほうが手っ取り早く、印象も強いですね。
そして死体や窓についた血でこの映画のトーンがわかります。

子どもを気にするところから、サマセットが優しさを持った人、そしてほかの刑事から疎まれていることがわかります。

バディものは二人は正反対の性格や状況で、初対面ではぶつかり合うのが鉄則です。
ミルズとも、もちろんぶつかり合います。
最初ぶつかり合った二人が惹かれあったり、喧嘩したり、またくっついたりしながら、二人で目標を達成する。

ある意味バディものは恋愛映画ととらえても良いと思います。

「セブン」では雨のシーンがとても多いです。
閉鎖的で憂鬱で陰湿な印象を与えます。暗い照明、狭い部屋や廊下、人ごみ、背景がぼやけて見えるなども同じような効果を与えていますね。

そしてそれらはすべてクライマックスの荒野への対比ともなっています。

「7日間」と示すのも大事で、予感を感じさせます。

何も起きない7日間なわけがなく、人生で最も重要な7日間が始まります。

タイトルシーン。
このシーンの映像はジョンの行動が描かれています。
ただの雰囲気づくりのシーンにしない工夫が見えますね。

「大食」「強欲」と事件が起きます。

そしてサマセットが上司に説明する形で、観客にも「7つの大罪」をモチーフにした連続殺人事件だと説明されます。

残りの大罪を覚えさせることは難しいですが、あと5つ事件が起きると示されるとわかりやすいですね。

図書館のシーン。
サマセットにとっての賢者は、かつての文豪たちです。
警備員とのやり取りやこれまでのシーンで引用元にもすぐに気づくサマセットなので、読書家だとわかります。

ミルズ家での夕食。
これによってサマセットとミルズの関係が築かれます。

普通の事件を扱った映画ならばトレーシーを描く必要がありませんが、「セブン」はラストシーンのためにトレーシーを印象付けさせなければなりません。
二人の関係を深める手段はほかにもあると思いますが、ここでトレーシーを使うことで二つの問題を一気に解決しています。

そして手がかりをつかみ、壁の指紋を見つけます。
サマセットは趣味と言っていましたが、この指紋のメッセージを見て事件を捜査すると決めたと思います。第一ターニングポイントです。

第二幕

「怠惰」の現場で写真を撮られ、怒ったミルズが名前を言ってしまうのもうまく処理していますね。

実はジョンが出ていたシーンで、ミルズが感情で生きていると話すのも、ラストを踏まえて考えると面白いシーンです。

トレーシーとサマセットの朝食シーン。
サマセットを通じて、観客にも妊娠が説明されます。
ミルズだけが知らない情報。果たしていつ知ることになるでしょうか。

トレーシーにも悩みを持たせることで、ただの端役ではなく、登場人物として際立たせています。
トレーシーを際立たせるほど、クライマックスがより強くなります。
トレーシーを励ます形で、サマセットの過去がわかります。
ひどい世の中を知り、それから逃れようとしているサマセット。納得していますが、心の奥底で後悔しています。

サマセットのFBIのコネ・ミルズの嘘の証言取り、とお互いに持っている技術を使ってジョンに近づいていきます。警察の裏の手口、正攻法でないのも面白いですね。

バーのシーン。
ここはサマセットの変化に関わるとても重要なシーンです。

サマセットは世間の無関心にうんざりしたために引退すると話しますが、ミルズは「辞めるからそう思いたいんだ」と否定します。世の中を言い訳にして逃げている、と言わんばかりです。それに対して、サマセットは何も言えません。

サマセットの自分の考えが揺らいでることを表しています。

その夜、サマセットはメトロノームを投げ捨てます。

ルーティーンができない。サマセットが変化に直面しもがいていることを反復を利用して表しています。

サマセットは事件が終わりを迎えるまで刑事を続けると話し、ジョンが自首してきます。第二ターニングポイントです。

第三幕

そしてクライマックス。
これまでの舞台の対比で何もない晴れの荒野で行われます。

ミルズにはジョンの言葉という最悪の形でトレーシーの死、妊娠の事実が伝えられます。

そしてミルズはジョンを撃ち殺します。

死んでもなお弾が切れるまで撃つミルズ。これまでトレーシーを描いてきたので、観客にもその「憤怒」が伝わってきます。

ラストシーン。
サマセットは再び世の中と戦うと変化し、終わります。

クライマックスは代案として、ミルズの代わりにサマセットがジョンを殺すと出されたようですが、デヴィッド・フィンチャーとアンドリューが強く反対したそうです。

世の中の残酷さ、悲惨さは変えられません。ここでサマセットが変えてしまうと、変えることができるような印象があります。

アンドリュー自身もニューヨークで生活し、毎日犯罪の絶えない生活と、それを見て見ぬふりする自分自身に嫌気が差したと述べています。

映画の中の世界ではなく、現実が悲惨なのです。

変えられない現実にどう立ち向かうか、どう生きていくか。その姿勢こそをアンドリューは伝えたかったと思います。

さいごに

素晴らしい脚本ですが、王道です。展開は読めます。

しかしなぜ最後まで面白いのかというと、デヴィッド・フィンチャーの築き上げた世界観、予想を上回るクライマックス、そして「7つの大罪を用いた連続殺人事件」という強烈なモチーフがあったからこそだと思います。

次回はクリント・イーストウッド最新作『運び屋』が公開されることにちなんで、『ミスティック・リバー』を研究したいと思います。

 

– fin –

ABOUT ME
akira
akira
1990年生まれ。SNSとは無縁の人。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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