こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。
第32回の movie labo は『ミックス。』です。
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
2017年公開の卓球ロマンス映画。
監督石川淳一、脚本古沢良太。119分。
ブルーリボン賞で主演女優賞を受賞。
『リーガルハイ』で演出・脚本した2人がそのまま担当しています。
水谷隼人さんや石川佳純さんなど本物の卓球選手も登場していますね。
映画『ミックス。』のヒーローズジャーニー
それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。
『ヒーローズジャーニー』とは。物語の王道法則から読み解く映画研究

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
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※この記事の情報は、2020年5月時点のものです。
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日常世界/賢者との出会い
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
幼少期に母親から卓球のスパルタ教育を受けていた多満子。
母が亡くなり、卓球から離れて普通の会社員になっていた。
卓球界のエース・江島と出会い恋人になるものの、ミックスペアの小笠原と浮気され、退職。
田舎に帰ってきた。
不審な男、萩原と出会う。
冒険への誘い
母親がコーチをしていた卓球クラブは今では廃れてしまった。
かつてのクラブの友人、弥生と再会する。
冒険の拒否
コーチをすれば会員も集まると言われるが、断る多満子。
戸口の通過
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
同じ頃にクラブの新規会員になった萩原と再会。
活躍する出島小笠原ペアに苛立つ多満子。
クラブの復活もかね、全日本大会のミックスに出場することを決める。ペアの相手は萩原だ。
試練、仲間、敵
練習を重ねて大会に挑むが、みな一回戦で敗退。
最も危険な場所への接近
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
萩原は元プロボクサーであったが、怪我で引退。
さらに妻の浮気と勘違いし暴力沙汰までしてしまっていた。
萩原の勧めで江島に会いにいく多満子だったが、猛練習をしていた江島に反省する多満子。
最大の試練
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
その帰りに偶然にも江島と再会。
自分の悪口を言っていた。何も言えない多満子を庇う萩原。
報酬
来年の大会で倒すと誓う多満子と萩原。
猛練習を重ねる。
帰路
しかし萩原の元妻が復縁を考え、就職の準備もしてくれており、その面接日は大会と被っている。
多満子にも江島から復縁を申し込まれる。
多満子は江島と復縁し、萩原は東京に帰る。
復活
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
残ったクラブ会員はそれぞれ自分のために大会に出る。それでも大会に行かない多満子。
萩原が面接をすっぽかして多満子を迎えに来る。
2人は大会に出場し、決勝まで勝ち進む。
決勝の相手は江島小笠原ペア。しかし敗北する多満子萩原ペア。
宝を持って帰還
画像引用元:ⓒ 2017『ミックス。』製作委員会
クラブの会員は増え、多満子と萩原はペアでコーチをしている。
映画『ミックス。』のテーマ
卓球映画で「たまこ」と聞けば「球子・玉子」と連想してしまいますが、「多満子」です。
多くを満たし、多くに満たされる子。多満子。
オープニングでは孤独にやけ酒をしていた多満子ですが、ラストシーンでは多くの人と卓球をしています。
各キャラクターとも、一人では出来なかったことを出来るようになっています。
『 それぞれの人生。
辛いことがあるけれど、
みんなが居れば乗り越えられる 』
ミックスペア、スポーツクラブという設定だからこそのテーマです。
映画『ミックス。』をさらに詳しく
『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。
第一幕
オープニング。
主人公・多満子のやけ酒と独り言。
人生の最底辺の状況から始まります。
続いて実家に帰る電車で、萩原と出会う。恋愛でありがちな男女が倒れて重なる、というベタ展開、そして吐いてしまうという最悪な出会い方をしています。
恋愛映画と示してから、モチーフである卓球と多満子の関係を描きます。
ナレーションを使って説明。説明的ですが、序盤なのでテンポよく進めることを優先しているのですね。映像ではギャルなどユニークなことを盛り込んでいます。
江島と再会、浮気されフラれ、田舎に帰る。ここまでのバックボーンを13分で描き、ストーリーに戻ります。
社会的には無職になり、男にもフラれてしまった多満子。さらに実家には借金があることがわかり、経済的にも厳しいという障害を与えます。
弥生との再会のシーン。
クラブの現状から始まり、弥生の現状、赤い髪の伏線、弥生は多満子にコーチになってクラブを復活させたい、コーチをしたくない多満子の交渉。多満子の卓球への思い、次のシーンへのつなぎ。とたくさんの情報とやりとりが詰め込まれています。
多満子と萩原がクラブで再会。
江島とのシーンでも卓球をやらなかった多満子。その多満子に再び卓球をやらせる役割は当然萩原です。
多満子が江島を取り返すと決意する。これが第一ターニングポイントです。
第二幕
ミックスで全日本に出る理由も、納得できるようにきっちりと描きます。
全日本大会で江島と再会するシーン。
小笠原が多満子と弥生の狭い間を行き来し、多満子の目を見て楽しみにしてますと話す。
小笠原のキャラクターがにじみ出ていますね。
弥生が多満子に近づくのも、弥生は事情がわかっているのでこの動きにも理にかなっています。
初戦は多満子のみならず、それぞれの弱点、トラウマが露呈し、全員初戦負け。
これらすべてがクライマックスの全日本の伏線になっています。
ストーリーが一区切りついたところで、クラブそれぞれのキャラクターのシーンを挟みます。
萩原の背景を、多満子に話す形で説明します。
萩原がプロボクサーというのも、天才少女と元ランカーの身体能力ならば鍛えれば江島たちとも闘えると納得できる設定です。
江島とレストランで再会するシーン。
二人にとって共通の敵・江島を使い、多満子の代わりに物申す萩原。二人の関係を強化させています。
『ノッティングヒルの恋人』でもレストランで似たようなシーンがありましたね。

ストーリーの半分のところで、二人が再び江島を倒すと誓う。
萩原のケガで引退せざるをえなかったボクサー、という職業としての思いもしっかりと描かれています。
スポーツものの外せない要素、特訓シーン。
『SHISHAMO』の音楽にのせて個性的なペアや、中国人の伏線も回収。とても面白く描かれています。
準備万端!となった所で、多満子と萩原にそれぞれ求めていたものが与えられます。
萩原の背景がわかるシーン、そして萩原の思わせぶりな「卓球が好き」というシーンはどちらも建設現場であり、ここを萩原の心境を吐露する場所、のように設定しているように思えます。
萩原と多満子が思いをぶつけあい、別れます。
全日本大会、多満子と萩原の強化、特訓、別れ。
スポーツ、ドラマ、スポーツ、ドラマ。と順番に描き、最後の全日本大家へと繋がっていきます。
弥生ら大人たちは多満子たちの答えに納得しますが、子どもである優馬は納得できません。
その子どもの純粋な思いが他のキャラクターを再び立ち上がらせます。
多満子と萩原が全日本に向かう。これが第二ターニングポイントです。
第三幕
それぞれのキャラクターのドラマを回収。最後に多満子と萩原の闘いに集中します。
決勝の前に、前回と同じように江島と小笠原の会話。
小笠原の余裕の無さや、これからの最後の戦いへとたぎらせてくれます。
試合中に萩原のドラマも回収。多満子も人生の真理に気づく。が、敗北。
結果的に弥生たちも多満子たちもみな負けてしまい、勝利を目指す外的ストーリーは失敗しました。
しかし、弥生は自分を取り戻し、優馬は自分の居場所を。落合夫婦は息子の死を乗り越え、萩原と多満子は最高のペアとなる。
試合には負けましたが、それぞれ勝利よりも大切なものを得ました。
各キャラクターの名前が表示される、それは新しいスタートなのです。
さいごに
スポーツものの王道でありますが、キャラクターやユーモアでオリジナリティを出していました。
細かいキャラクターまで個性的で面白かったですね。
次回はロン・ハワード監督のF1映画『ラッシュ/プライドと友情』を研究します!
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