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映画『マリッジ・ストーリー』の解説(ネタバレ有)愛がないという単純な話じゃない

マリッジ・ストーリー

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第52回の movie labo はNetflixで配信中の『マリッジ・ストーリー』。

2019年公開の人間ドラマ。監督・脚本はノア・バームバック。136分。

2020年のアカデミー賞に作品賞・主演男優賞・主演女優賞・助演女優賞・脚本賞・作曲賞の6部門にノミネートされ、弁護士のノラを演じたローラ・ダーンが助演女優賞になりました。

映画『マリッジ・ストーリー』のヒーローズ・ジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

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ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

マリッジ・ストーリー』は、『Netflix』で視聴ができます。

『 N e t f l i x 』へ

日常世界

NYに住んでいるチャーリー、ニコール、ヘンリー。
チャーリーとニコールは離婚と別居を考えているが、うまく話は進まない。チャーリーの劇団で女優のニコールは、劇団を抜けてLAでテレビの仕事をする予定であり、ヘンリーを連れていく。

チャーリーの次の舞台はブロードウェイだ。

冒険への誘い

LAの実家に住み始めたニコール。ニコールは弁護士のノラに離婚の依頼をする。

冒険の拒否/戸口の通過

一度は忘れるふりをするも、離婚の書類を受け取るチャーリー。弁護士を立てるように言われるが、舞台が忙しく後回しにする。

試練、仲間、敵

弁護士のバートを雇うチャーリー。ヘンリーとなるべく長く過ごそうとするチャーリー。ニコールはヘンリーとLAに住み続けることを考えており、チャーリーはNYが家だと主張する。

最も危険な場所への接近

お互いに弁護士を交えて話をするチャーリーとニコール。チャーリーが不利であり、バートは移住を認めるように説得するがチャーリーは認めない。

最大の試練

離婚は裁判となり、チャーリーは新たに弁護士のジェイを雇う。お互いに罵り合うような裁判となってしまう。裁判所は調査員に夫婦や子供を調べてさせてから判断すると話す。

報酬

ニコールとチャーリーは弁護士抜きで話し合おうとする。だが次第に大喧嘩へと発展してしまい、お互いに傷付け合う。

帰路

調査員がチャーリーの家を訪れる。いい印象を与えられなかったチャーリー。

復活

裁判は終わり、ニコールが少し多い親権を得る。一人NYに戻るチャーリー。

宝を持って帰還

LAで仕事を得たチャーリーはしばらくLAに住むことにする。

映画『マリッジ・ストーリー』のテーマ

ニコールは自分を取り戻すために離婚を決意し、チャーリーは離婚問題にぶつかることで自分とニコールのことを知ります。

チャーリーとニコールはお互いに仕事の才能を認め、お金などは奪ったりしないように穏便に離婚しようと思っていました。

お互いに好きであり愛しているにもかかわらず、別々の道を進もうとしています。

常にともにいることが必ずしも幸せではありません。

幸せには色々な形がある

これがテーマです。

最後は離婚し別れて暮らしますが、ラストシーンのチャーリーの靴紐を結んであげるニコールから、ニコールのチャーリーへの想いはあり続けています。

この物語で成長したチャーリー、もしかしたら映画のずっと後で再婚しているかもしれません。
ニコールはLAに住みたいから離婚するのではなく、パイの話があったから離婚の書類を渡すわけもない。
離婚も今だけのことで、今後どうなるか誰にもわからない。

できることは、ただ今を精一杯生きていくしかないのです。

映画『マリッジ・ストーリー』をさらに詳しく

『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
チャーリーのナレーション、ニコールもナレーションでお互いの良いところを語っていく。

愛が伝わってくるシーンかと思いきや、それは離婚調停員の提案で行われているものであり、現実は別れようとしているというギャップを生み出しています。

ナレーションは全て説明であり、伏線でもあります。オープニングだからこそ観客は全ての情報を吸収しようとするので、退屈に思うことはありません。

住んでいる場所、それぞれの性格、職業がわかったところで物語が始まります。

チャーリーが主人公なので、最初はチャーリーの視点から話が進んでいきます。

チャーリーは調停員の提案にのり、一方のニコールは暴言を吐き捨てる。

劇団の打ち上げでも帰ろうとするなど、映画の初めではチャーリーは理解のある男でニコールが悪者という印象を与えています。

しかしニコール視点で描かれ始めるとその印象が逆転していていくように描かれていますね。

演技では泣けなかったニコールが、チャーリーには見せないように泣く。視点が移る前に観客の印象を動かすせるようなシーンの終わりにしています。

LAでのニコールの暮らし。サンドラやキャシーなど、サブキャラクターたちもとても魅力的に描かれていますね。

キャラクターが移動しながら会話することは映画を通じて一貫しています。

テレビでの撮影。スタッフたちや他のシーンでのチャーリーの劇団など、大勢のキャラのテンポの良い雑談が面白いですね。

ノラと会うニコール。ノラに話す形で、ニコールがチャーリーとの出会い、自分の今の思いを一気に語ります。

もちろん座って語るのではなく、歩きながら、クッキーを食べながら。

ニコールを映すカメラのピントが一瞬ズレているので、もしかしたらニコールの動きは完全にアドリブかもしれませんね。

オチの浮気とクソ野郎は切れ味抜群です。

チャーリーに書類を渡すシーン。

サンドラ・キャシーと3人から始まり、チャーリーと二人、キャシーとチャーリーの二人などキャラクターが入れ替わることで状況に変化をつけながら、チャーリーに書類を渡すという目的をはたす。

短い映画のようなシーンになっていてとても面白いです。

キャシーもこのシーンと最後のパーティーのシーンしか出てきませんがとても印象に残るキャラクターに描かれていてすごいです。

チャーリーが帰っていく時に書類を忘れて行こうとしますが、これはやはりわざとですね。チャーリーのアップが決定的です。チャーリーは弁護士ざたになることを認めようとしていません。

電気を消して去っていくチャーリー。暗闇のニコール。まさにニコールのチャーリーが嫌いなところとニコールの不満が表現されています。

離婚の書類を受け取るチャーリー。これが第一ターニングポイントです。

第二幕

ジェイと話すチャーリー。
部下の弁護士も入れて3人で描かれているのでユーモアも交えることができています。2体1の構図になり、まるでチャーリーが責められているように見えますね。

チャーリーが帰ろうとするときに一瞬映るクッションには「Eat,Drink and Remarry」という文字。「食べろ、飲め、そして再婚しろ」というメッセージですね。

NYに戻ってきたチャーリー。ノラとの電話のシーンでも、チャーリー劇団の監督として色々なタスクをこなしながら、移動をしながら会話をしています。

ニコールがヘンリーにLAに住んでもいいと話したことを知り、激怒してニコールに電話するチャーリー。

お互いに弁護士を立ててから、二人の仲はさらに悪化しています。

映画の半分のところで、弁護士を交えて本格的に離婚の話をします。

巧みなノラの戦略・話術で追い込まれていくチャーリー。

ランチをチャーリーの代わりに決めるニコール。ノラがチャーリーを讃えるところでニコールが嬉しそうにしているところなど、ニコールの優しさやチャーリーをよく知っていること、愛していることが伝わってきます。

裁判になり、チャーリーは新たにジェイを雇って挑む。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

これまでさりげなく散りばめられた伏線を回収しながら、言葉による殴り合いの裁判をするノラとジェイ。

こんな裁判は望んでいた解決法ではないニコールとチャーリーは話し合いを始めます。

しかしこれも、裁判以上の壮絶な罵り合いとなってしまいました。

最初はなるべく穏やかに話そうとしますが、キッチンや奥の部屋を動きながら話すうちに徐々に激しくなっていく。

激怒するきっかけはお互い両親について。オープニングでしか語られなかったキャラクターの最も言われたくない部分をここでしっかりとえぐりだします。

チャーリーの家を訪れる調査員。

変人なほど変なわけではないけど、独特な人物。絶妙なキャラクターをしている調査員で存在感がすごいですね。まるで彼女が幽霊のような演出をしています。

離婚成立後、パーティーで家族と共に歌うニコール。バーで一人歌うチャーリー。

歌や長所を読み上げるシーンなど、アダム・ドライバーの魅力がたっぷりと描かれていますね。

ニコールがチャーリーの長所を書いた紙をずっと持っていることも、チャーリーへの愛を感じさせます。

セリフや書いてある言葉ではなく、行動として表れているのでチャーリーへの愛は真実と言えます。

ラストシーン。ハロウィンで時が経ったことが分かります。

チャーリーとニコールはそれぞれの車に乗り込み、真逆の道へと走り去る…と見えて、実は同じ方向に帰っていくんですね。家族の未来を表しているはずです。

さいごに

長いワンシーンもありながら巧みなセリフで生きているキャラクターを描き、チャーリーとニコールの話し合いのシーンでは圧倒される。細部まで丁寧に作られ、音楽も良い。終盤は動きが少ないかもしれませんが、とても素晴らしい映画でした!

次回はU-NEXTで配信中、ナンニ・モレッティ監督、パルム・ドール受賞の『息子の部屋』を研究します!

ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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