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映画『空に住む』の解説(ネタバレ有)地に足つけて、空に住む。

空に住む

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第78回movie laboは『空に住む』。

2020年公開の映画。
監督青山真治、脚本青山真治、池田千尋。118分。

主題歌の『空に住む〜Living in your sky〜』は原作小説の小竹正人著の『空に住む』から着想を得て作者本人が作詞したもので、原作とセットで販売されました。歌っている三代目J SOUL BROTHERSの岩田剛典も映画に出演しています。

監督青山真治の長編の遺作となりました。

『空に住む』のヒーローズ・ジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

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ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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日常世界

叔父の計らいでタワーマンションに愛猫のハルと引っ越してきた直美。両親は事故で亡くなったばかりだ。出版社で働いており、編集長に受ける企画はないかと求められる。

冒険への誘い

タワーマンションのエレベーターで若手人気俳優の時戸と出会う直美。

冒険の拒否

恋愛も仕事も気が乗らない直美。

賢者との出会い/戸口の通過

時戸と再会し、オムライスを作ってあげる。電話番号を教える直美。

試練、仲間、敵

同僚の愛子は結婚間近だが、不倫した担当の作家との子どもを妊娠している。本人は産むつもりだ。叔母の明日子に両親の葬式の時に泣けなかったと話す直美。

最も危険な場所への接近

夜、時戸から電話がかかってくる。

最大の試練

時戸と一夜をともにする直美。

報酬

時戸との関係が続く直美。時戸の哲学の本を作りたいと話し、時戸も乗り気だ。

帰路

時戸の熱愛が報道される。明日子いわく時戸はいつも違う女性を連れているようだ。

ハルの重い病気が発覚し、亡くなってしまう。

復活

時戸の本を作るために長時間のインタビューをする直美。インタビューを終え、一夜をともにし、二人の関係を終わりにする。時戸の本の企画も通り、愛子の出産も見届ける。

宝を持って帰還

オムライスを食べ、空を見る直美。

映画『空に住む』のテーマ

どんなことがあろうと、
地に足をつけて生きていかなければならない

これがテーマです。

この映画には様々な状況の女性が3人登場します。

両親を同時に失ってしまった直美は勢いに乗る若手俳優との本物なのか偽物なのかわからない恋をする。直美はあまり愛されていなかった両親の死に実感を感じず、葬式でも泣くことはありませんでした。不倫した相手の子を産もうとする婚約中の愛子、元CAで専業主婦、人生はもう終わったと嘆く明日子。みな満たされているはずなのにそれぞれ何かが足りず、嘘やフィクションの中をふわふわと生きています。

当初、恋愛にも仕事にも閉塞感というか抵抗があった直美でしたが、幼い頃から自分を支え、直美にとってもう一人の自分だったハルとの別れをきっかけに、一生続く人間関係の中で最後は自分の足で立って生きていくことを覚悟しました。そんな心の変化を描いた作品です。

映画『空に住む』をさらに詳しく

『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
タワーマンションのエントランス。監視カメラの映像。ハルを連れた直美がやってくる。叔父の雅博が迎えに出てくる。家で待っていた明日子が直美を出迎える。直美の両親の位牌に手を合わせる3人。タイトル。

直美と雅博たちとの会話で、直美が引っ越してきたこと、直美の両親が亡くなったばかり、雅博らはすぐ近くに住んでいるということが説明されます。

興味深いのは、映画全体を通じてタワーマンションの全景が映されないことですね。普通の映画なら入れそうなところですが、映さないことでこのタワーマンションがどこか空想の場所のように思えます。靴を脱がなくていい、というところも何気に良いですよね。靴を脱いだり履いたりするのはめんどくさく、無駄にシーンが長くなってしまいます。

雅博がお金持ちで気前がいい、明日子さんの『まーくん〜』の言い方で少しうざい、というキャラクターも滲み出ています。シーンの最後に重要な時戸の看板。大事な情報は最後に、です。

直美の働く出版社が郊外の田舎にあるところも面白いです。住んでいる場所はタワーマンション。働く場所は田舎の地面。対比であり、仕事場が直美の現実・リアルを描いているように見えます。川を超えることがその境界線を跨ぐように表現されています。柏木の失礼な感想も軽く受け流す直美。やはり両親の死をどこか遠くに感じているようですね。

売れる企画がないか尋ねられる直美。内的なストーリーは直美の心の変化、外的なストーリーでは面白い企画を作り吉田の本を出す、と映画の目標が設定されました。

その直後、時戸と出会います。最初は不審人物かと思いきや、時戸だった。そう思わせるカメラワークにもなっていますね。

時戸と再び会い、家に入れる。これが第一ターニングポイントです。

第二幕

映画内の重要なアイテムとなるオムライスを時戸に作り、食べさせる直美。鶏肉でなくベーコンというところがまだ不完全な状態のように感じさせます。

時戸との仕事の話も、最後のインタビューの伏線というか説明になっています。時戸の感情のない話し方も時戸の底知れない魅力を表現していてとても良いですね。

続いて釣り堀で雅博らと会話、愛子と会話、一人の明日子。中、外、中、沈黙と場所を変えたりセリフを無くしたりで場面に変化をつけています。会話のシーンが続くと室内になりがちでつまらなく思ってしまいますからね。

時戸と関係を持ってしまう直美。直後のシーンでワイングラスが割れます。歓迎会で直美はグラスを見て割れそうと言い、雅博は直美のことを繊細と言いました。そのワイングラスが割れるということは、直美の中の何かが割れた、ということを視覚的に表現しています。使ったアイテムが前のシーンで出てきた時にはなにか絡めて印象付けておくこと、もしくは一度出てきたアイテムは後のシーンで使うとより面白くなります。

雅博はインスタをきっかけに写真が何かを語るといい、その直後のシーンでは時戸が直美は本当のことがわかっているのに外側で嘘をついていると指摘します。さらに時戸は人間関係のめんどくささを語ります。人間関係や心の中をテーマにした会話が繰り広げられます。

怒る時戸のシーンから直美の崩壊が始まっていきます。時戸のスキャンダルが話題になり、明日子にも苛立ち、ハルの病気が発覚。そしてハルと死別します。

ハルと直美が似ていると医師が言った時の直美の『違う』というセリフ。これまで敬語だったのに急に強い言い方にするととても印象が残りますね。上手い選択です。ウエディングドレスを着た愛子の笑顔も、まさに嘘。という笑顔で面白いです。

直美が話ができそうと思わせたコンシェルジュも来週異動と直美をとことん孤立させます。

ハルは直美の分身であり、ハルの死は直美の死と同じ意味です。そして一度死んだ直美は復活します。

直美が時戸のインタビューを始める。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

結局吉田は新作の書き下ろしを直美の会社で出版することになりました。直美の努力があろうと無かろうと社会は進むということかもしれません。

時戸の夢は地面に足をつけて立つこと。もちろんこれは映画のテーマを代弁したものです。

インタビューを終え、直美は最後に時戸と行為をし、関係を終わらせます。ハルの死に涙する直美。死を受け入れ、覚悟を持った直美は愛子も引っ張り上げて突き進みます。どんな最低な人間だろうと生きていかなきゃいけないと決意している直美。まさに無敵となりました。

ラストシーン。
直美はちゃんと鶏肉を使った完璧なオムライスを食べ、空を見ます。

地に足をつけ、空に住んでいるようなタワーマンションが本当の意味で直美の家となり、ここで生き続けるのです。

さいごに

繊細な心の変化、緻密に計算されたカメラワーク、音楽、とシーンの構成、現代的なテーマ。観れば観るほど心に沁みてくるとても素晴らしい作品でした。

次回はトム・クルーズ主演の『バリー・シール/アメリカをはめた男』を研究します!

お家映画をもっと楽しくしたい人は、ぜひコチラの記事も読んでみてください。

ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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