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映画『クレイマー、クレイマー』の解説(ネタバレ有)フレンチトーストだけではない名シーンの数々

クレイマークレイマー
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『クレイマー、クレイマー』です。

1979年公開のヒューマンドラマ。105分。

エンブリー・コーマン原作の小説をロバート・ベントンが脚色し、監督もしました。

ロバート・ベントンは今作でアカデミー監督賞と脚色賞、『プレイス・イン・ザ・ハート』で脚本賞。
他にも『俺たちに明日はない』『スーパーマン』など多くの傑作を描いています。

原題は『Kramer vs. Kramer』。
同じ名前の裁判……つまり離婚裁判のことを表しています。当時のアメリカでは離婚・親権が社会問題となっていたそうです。

フレンチトーストのシーンがあまりにも有名な映画ですが、そのシーンだけが素晴らしいわけでは全くありません。

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映画『クレイマー、クレイマー』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『クレイマー、クレイマー』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

妻・ジョアンナと息子・ビリーを持つ仕事第一主義のテッドは、次の計画が成功すれば重役になれるチャンスを得る。

冒険への誘い/賢者との出会い

ジョアンナが別れを告げ、家を出ていく。テッドとジョアンナの共通の友人・マーガレットが話を聞き、会いにやって来る。

冒険の拒否

副社長に別れ話をしてしまうテッド。戻ってくると楽観視している。副社長はビリーの世話で仕事への悪影響を懸念するが、テッドは仕事に尽くすと宣言する。

戸口の通過

一人で生きていくと書かれたジョアンナからの手紙。傷つくビリー。

試練、仲間、敵

ジョアンナが恋しいビリー。二人だけの生活はうまくいかず、テッドは仕事でもミスが目立っていく。

最大の試練

ビリーの反抗に怒るテッド。厳しく叱りつけ、ビリーは「ママ!」と号泣する。
お互いに謝るビリーとテッド。

ビリーは自分のせいでジョアンナが出ていったのではないかと不安に思っていた。
テッドはジョアンナが出て行った原因は自分にあるとビリーに話す。

報酬

ビリーとの良好な関係を築いていくテッド。
しかし、ジョアンナからビリーと暮らしたいと話される。怒り、拒否するテッド。

帰路

ビリーの親権を巡って裁判が始まる。マーガレットもテッドの変化を主張するが、裁判に負け、テッドとビリーは離れることが決まる。

復活/宝を持っての帰還

上訴も考えるが、ビリーを利用しなければ勝てないと知り、やめるテッド。ビリーに説明するテッド。泣いてしまうビリーを慰める。
しかし、ジョアンナがビリーの家はここだと話し、辞退する。テッドはジョアンナの気持ちを汲み、優しい言葉をかける。

映画『クレイマー、クレイマー』のテーマ

冒頭、ジョアンナが出ていった後、マーガレットが訪れたシーン。
テッドは人生最高の瞬間を迎えて家に帰ったのに、出ていかれたと叫びます。

テッドはこの時点で自分のことしか考えられない人間でした。

その結果、ジョアンナは出ていき、ビリーとの生活もうまくいきません。
愛が生まれませんでした。

『 愛とは、
人の気持ちを考え、理解し、尊重する
 』

このことをビリーとの生活でテッドは学んでいきます。

映画『クレイマー、クレイマー』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
軽快な音楽とともにタイトル。

ビリーの寝室。
ビリーを寝かしつけるジョアンナ。そして出ていく準備を始める。

テッドは昇格し、さらに重役に上がるチャンスを得る。

「愛」が映画のテーマなので、オープニングでは愛に満ちたシーンで始まります。

ジョアンナにとっては最後の別れです。

映画はクライマックスに向けて徐々に盛り上がるように作られますが、だからといってオープニングは落ち着いている必要は全くありません。それはヒューマンドラマでも同じです。

家族映画のオープニングで、せわしない朝食がよくありますよね。
しかし本作は、すでにクライマー家は崖っぷちの状態という高い緊張感の中から始まります。

テッドが帰ってきて、ジョアンナが別れを告げる。
仕事人間の夫を置いて妻が出ていく。何度も使われている要素であり、誰もが理解し、共感できる事件です。

テッドのせいでジョアンナが出ていくので、テッドが好かれていないキャラクターに描かれています。

マーガレットが訪れるシーンでも、彼女の話を聞かず自分の思いのたけをぶちまけます。

ジョアンナには体のいいことを言っておいて。
彼の社会的な考えが出ています。

会話のシーンでありながら常に部屋の中をせわしなく動いているのも面白いですね。

見ている側も会話が面白くないとつまらなく感じやすく、演者も動きのあるほうが演技がしやすいそうです。

しかしその後のテッドは、ビリーとの生活を何とかしようと考え、副社長のビリーを親戚に預ける案も拒否します。この行為でテッドは根っからの悪人ではないと理解できるので、観客は嫌いにはなりません。

逆に乗り越えてほしいと望みたくなりますね。

その乗り越えたことを表しているのが、フレンチトーストを使った反復シーンです。

一度目のフレンチトーストの調理は本当に雑で汚い。テッドの性格も表しているようです。

シーンの最後、アクセントとなるようにトーストをぶちまけ、叫んで終わる。この後どうなるんでしょうか。

ジョアンナからの手紙が来て、戻ってこないことが判明する。これが第一ターニングポイントです。

手紙を読んでいる最中に、ビリーがテレビの音量を上げる。行為によってビリーの感情がわかる。巧く、せつないシーンです。

第二幕

テッドとビリーの食事のシーンが何度か出てきますが、どれも関係が悪化したり気まずいシーンに作られています。

これらも2回目のフレンチトーストを強調するための伏線のように思えます。

途中、無言で朝食を準備するテッドとビリーのシーンがあります。

無駄のない動きで準備しますが、二人の会話は全くありません。二人とも同じ方向を向いて、目を合わせるそぶりもありません。
ただ時間が経ち生活に慣れただけ、という印象を持ちます。

マーガレットは子育ての先輩でもあり、離婚の先輩でもあります。
テッドの対比であり、テッドの変化を観客とともに一番わかっている存在ですね。

その後テッドとビリーは大喧嘩をしますが、お互いに謝り、ビリーが不安に思っていたこと、テッドは自分の過ちを話すことで、二人の関係が強化されます。

映画のみならず、ぶつかり合って本音を言い合うことで深い関係が出来上がるのです。

ジョアンナと再会するシーン。
ジョアンナが見違えるように元気になり、今の生活を話します。
しかしビリーと暮らしたいと言った瞬間に空気が一変し、険悪なムードに。

最後のアクセントでグラスを弾き飛ばし、終わります。

シーンの中にうねりがあるとともに、物語の方向を変える重要なシーンです。52分。ちょうど映画の半分です。

これまで、テッド・クレイマー対ビリー・クレイマーでしたが、ここからはテッド・クレイマー対ジョアンナ・クレイマーの戦いとなります。

グラスを飛ばしたり、アイスクリームを使った大喧嘩のアイディアはダスティン・ホフマンとビリー役のジャスティン・ヘンリーが提案したようで、ほかのシーンでもいろいろなアイディアが採用されたそうです。脚本の可能性は脚本家だけが生み出すわけではない、ということですね。

テッドの面接のシーン。
裁判のために絶対に就職しなければらならない。しかし世間はクリスマス・新年でお祭りムード。

困難な状況の中、テッドのプレゼンテーション。判断される側のテッドが「今日だけの申し出で、今ここで決めてほしい」という強気の駆け引き。さりげないですが、クリスマスパーティーの中で一人固い表情で待っているテッド、というのも彼の状況を表しています。

緊張感の高く失敗できない試練。その試練をテッドの技術と意志で乗り越える。とてもよく出来たシーンです。

そして裁判が始まります。第二ターニングポイントです。

第三幕

ジョアンナへの質問のシーン。
およそ9分30秒の長さで、ここだけで映画の10分の1を占めています。

ジョアンナの人生や気持ちを深く考えて作られたセリフ、そしてメリル・ストリープの演技。後半は一転してテッドの弁護士による質問の攻撃。

長いですが目が離せないシーンになっています。

ジョアンナに同情するところもあれば、弁護士の攻撃にかわいそうにも思えてしまう。

ジョアンナが悪役の立ち位置にいますが、悪とははっきり言えない、誰も幸せにならない裁判であり、複雑な心境を抱かせます。

テッドへの質問で、テッドの変化を感じますが、いまだに感情的になってしまう欠点はあります。さらにビリーのケガを利用され、窮地に立ちます。

副社長にジョアンナが出ていったことを話したり、ジョアンナにビリーのけがを話したり。

彼は口が災いのもとです。

ビリーとの別れの朝。
完璧なフレンチトーストをビリーとともに作り上げます。最初の朝もフレンチトーストでした。

そしてラストシーン。
ジョアンナが申し出を断り、ビリーの引き取ることを辞めます。

うれしいはずのテッドですが、ジョアンナに一人で説明に行かせます。
テッドはジョアンナの気持ちを汲み取れるように変化したのです。

さいごに

フレンチトーストを作る。
これしかしていないのにもかかわらず、観客の心に深く残る。

なぜならばそれまで二人のドラマを見ていたからです。これが脚本・物語のすごいところだと思います。

次回は異色のスポーツ映画『フィールド・オブ・ドリームス』を研究します。

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– fin –

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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