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映画『キツツキと雨』の解説(ネタバレ有)非日常と見知らぬ青年がもたらした変化

キツツキと雨

こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第29回の movie labo は『キツツキと雨』です。

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

2012年のコメディ映画。
監督沖田修一、脚本沖田修一、守屋文雄。129分。

東京国際映画祭で審査員特別賞。ドバイ国際映画祭で最優秀脚本賞・最優秀編集賞、役所広司は最優秀男優賞を受賞しました。

守屋さんは撮影隊の美術として出演し、見せ場もあったそうですが、丸ごとカットされてしまったようです……。

映画『キツツキと雨』のヒーローズジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

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この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

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日常世界

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

林業をしている岸克彦。
妻・咲子は亡くなり、息子の浩一と2人暮らしだが、うまくいっていない。
克彦には人並外れた天候を読む力がある。

冒険への誘い/賢者との出会い

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

ゾンビ映画の撮影隊が村に来ている。
巻き込まれる形で克彦は手伝いし、出演まですることに。

新人監督の幸一と出会う。

冒険の拒否

撮影隊の雑な扱いに怒る克彦。

戸口の通過

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

同僚らに映画出演で尊敬され、嬉しい克彦。
招待されたラッシュ上映に参加し、自分の映像を見る。

試練、仲間、敵

幸一を駅まで送る克彦。
幸一は東京に逃げようとしていたが、助監督の鳥居に捕まり、叱られる。

一方、浩一は東京へと出て行ってしまう。

最も危険な場所への接近

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

テスト撮影をする幸一。しかし様々な問題が幸一に押し寄せる。

最大の試練

本番。OKかやり直しか言えない幸一。克彦の助言?でやり直しを告げる。

報酬

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

幸一の撮影に向けた自分ルールを聞く克彦。克彦は幸一に総檜の監督の椅子を作り、渡す。

エキストラに大勢の村人を集める克彦。さらにスタッフからも次々とアイディアが浮かび、村人の協力のもと、順調に撮影が進む。

帰路

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

咲子の三回忌を忘れていた克彦。
しかし浩一が帰ってきて、準備をしてくれていた。

浩一の将来を勝手に決めようとする親戚に怒る克彦。

大物俳優・羽場の撮影をやり遂げる幸一。撮影後、羽場から監督と認められ、泣く幸一。

復活

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

ラストカットを撮影したいが、土砂降り。雨のまま撮影するか迷う幸一。と、克彦が現れ、晴れると告げる。信じて準備する幸一たち。
雨は止み、無事に撮影が終わる。

宝を持って帰還

キツツキと雨画像引用元:ⓒ 『キツツキと雨』製作委員会

幸一は次回作を撮影している。
克彦は浩一と共に林業を続ける。

映画『キツツキと雨』のテーマ

克彦は最初、浩一との関係は悪く、また幸一にも「年下なんだから手伝え」と自分の価値観を押し付け、相手の心や気持ちを考えていませんでした。

 

幸一との関わりの中で若者も色々と背負っている、考えていると知り、三回忌のシーンへと繋がります。

 

相手と向き合うには、
自分が相手を想うことが必要
 』

 

ということです。

 

人と人との関係は、自分がどう向き合うかで変化します。

克彦のゾンビの演技がうまくできなかったのも、助監督の意図が読めなかったからなんですね。
幸一とのお風呂での演技では、それらしくなっています。

映画『キツツキと雨』をさらに詳しく

『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

山中。
チェーンソーで木を切っている克彦。水筒で水を飲み、木を切り倒す。

と、助監督の鳥居が現れ、映画の撮影をしているので、止めてくださいとお願いする。
枝打ちをする克彦。遠くに撮影隊がいる。

克彦の初登場シーンを仕事中にしていることで、職業は林業ということを手っ取り早く説明しています。
さらに鳥居が現れることで、この映画は、映画の撮影の物語なんだということが自然と予想できます。

克彦は映画の撮影にチェーンソーの音はいけないということがわからず、鳥居も枝打ちがどういう作業なのかわかりません。
お互いに相手のことを知らず、理解できないというテーマをオープニングから表しています。

続く朝食のシーンで、独りで食事する克彦、もう一人分の朝食、そして妻の遺影に挨拶することで、家の事情が伝わってきます。
手慣れた料理の手つき、小さなスリッパ、庭には廃れた園芸の跡、と細かい描写も見事です。

もう一度仕事のシーンとなりますが、ここでは重機で迫力のあるシーンを見せ、また克彦の天気を読む能力を説明します。

続く同僚との昼食のシーンでも、ありそうな日常会話の中で野宮には幼い子どもがいる、克彦は甘いものを控えている、など伏線を張っています。

そして家に帰り、息子・浩一といきなり喧嘩することで二人の関係、そして三回忌が控えていることを説明します。

どれも他者と話したり喧嘩したりすることで、説明と気づかせないように説明しています。

克彦の説明が終わると、幸一ら撮影隊と出会い、関わっていくことになります。
幸一は克彦にとって若者の心を教える賢者と言えますが、克彦もまた幸一に自信を与える賢者の役割になっています。

小川でカニを捕まえたり、ヒマつぶしに手遊びしたりと、克彦は子どもっぽい性格のようですね。そしてもちろん、自然を愛しています。

ラッシュを見て、映画の世界に魅了される。これが第一ターニングポイントです。
ゾンビ役をしましたが、その時点では克彦は映画に興味はありません。流れが変わったのは映画に対する考えが変わったからだと思い、ここを第一TPにしました。

幸一にとっても自分の撮った映像に絶望するシーンなので、ラッシュのシーンは重要な転換だと言えます。

さりげなく周囲の反応を気にしている克彦、素晴らしいです。

第二幕

駅のシーンで、幸一を捕まえる鳥居。
「監督出来んだぞ! 幸せなんだぞ!」このセリフで鳥居の映画人生が伝わってきます。
代わりに坪井が去っていきますが、黄色い帽子のおかげで誰だったのか簡単にわかるようになっています。

台本を取りに来た幸一。
仏壇に供えてある台本を見つける、そして克彦の感想は幸一に自信を与えるきっかけになっています。
駅に送ってもらうときは克彦を適当に扱かっていた幸一でしたが、克彦の死にかけたエピソード、死に対する価値観を聞くことで、幸一の克彦に対する態度が変わります。

これもテーマを表しています。
お菓子代わりに海苔を出すアイディア、素晴らしいです。

台本に「自分」とはっきり書いてあるのも、視覚的に幸一の課題を見せています。

その後幸一は、克彦とともに撮影を順調に進めていきます。

撮影後の昼食シーン。克彦は樹齢について、幸一は彼なりに撮影の無事を願い、自分ルールを課していることを話します。
お互いについて知り、距離が近づいていく。
去っていく幸一を見る克彦の目が、やはり変わっています。

撮影監督の「やるの、やんないの」という反復セリフ。撮影監督を印象付けるセリフでもあり、幸一のリアクションの違いで幸一の変化を表すことにも貢献しています。

そして克彦は坪井の帽子をかぶることで、完全に映画の人になりました。

妻の三回忌をするため、克彦は撮影隊から離れる。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

反復で使われる靴下のシーン。
どこかから聞こえる声も、幸一の弱気な部分を表していました。しかし監督というのはすべてを決める職業。彼が人に言われず、自分の意思を貫く強さを手に入れました。甘いものを控えていたのも神頼みでしたが、そんなものは実際、意味がありません。

その結果、克彦なしで幸一は大物俳優の羽場のシーンに挑み、見事成し遂げます。
羽場が褒める際、握手をしてからセリフを言う。動きの後にセリフ、まず見せることが大事です。細かいですが大事な順番です。

克彦も浩一の考えを尊重するように変化しました。
浩一と将棋を指す時、飛車を置いたときに克彦の手が止まるのも、素晴らしい。
分かり合った関係が修復されました。

テーマを表すサブストーリーが終わり、メインストーリーである撮影も無事に終わります。

浩一との朝食シーン。セリフがないですが、浩一の服だけで林業を始めたんだな、とわかります。
ここでの二人の海苔の取り方、食べ方が一緒なのも素晴らしい。

仏壇には撮影隊の集合写真が供えられています。
幸一も克彦の作った監督の椅子に座れるようになっています。

二人は別れましたが、二人にとってとても重要な出会いだったと、お互いに小道具を使って感じさせます。

ラストシーン。
水筒の水を飲み、木を切る克彦。オープニングと逆の順番で映画が終わります。

さいごに

派手なシーンがあるわけでもなく、名言と呼べるセリフもないかもしれません。
しかし一つ一つの動きには深い意味があり、とても穏やかに、そして抜群に面白い映画でした。

2012年3月号の『シナリオ』にシナリオが掲載。

キツツキと雨 ユートピアを探して』という小説に映画の前日譚が描かれているので、興味のある方はそちらもぜひ。

次回は、コメディ映画『翔んで埼玉』を研究します!

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– fin –

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1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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