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映画『勝利への旅立ち』の解説(ネタバレ有)負け犬たちの復活劇

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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第81回のmovie laboは『勝利への旅立ち』。

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1986年公開のスポーツ人間ドラマ映画。
監督デヴィッド・アウスポー、脚本アンジェロ・ピッツォ。115分。

実話を基にした映画で、シューターもを演じたデニス・ホッパーが唯一アカデミー賞にノミネートされた作品でもあります。
制作総指揮のジョン・デイリーは『ターミネーター』、『プラトーン』、『ラストエンペラー』などを作り、アカデミー作品賞を13作受賞するなど凄腕のプロデューサーですね。

2001年にUSAトゥデイ紙は「歴代のスポーツ映画の中で最も素晴らしい」と評しました。

原題の『HOOSIERS』の意味は『インディアナ州の住民』で、つまるところ田舎者、ということですね。

映画『勝利への旅立ち』のヒーローズ・ジャーニー

それでは、ヒーローズジャーニーを見ながら研究していきましょう。

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ヒーローズジャーニーって何?
という方はこちらの記事をどうぞ!!

https://kurashi-create.com/heroes-journey/

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。

日常世界

インディアナ州にある小さな田舎町。ノーマンが高校バスケの新コーチとしてやってくる。校長とは大学時代の古い知り合いだ。教師のマイラと出会う。

賢者との出会い

並はずれたバスケの才能のあるジミーと会うノーマン。しかしジミーは父のように慕っていた前任コーチが亡くなったことで部活に参加しなくなったようだ。

マイラはジミーを心配し、関わらないようにとノーマンに警告する。無理やりやらせるつもりはないノーマン。

冒険への誘い/冒険の拒否

街の人々はみなバスケに熱く、自分達のやり方に従うようにノーマンに話すが、自分のやり方を突き通すノーマン。私語をしていた選手を追い出し、5人で練習を始める。選手の父親で、地域のバスケ事情に詳しいが飲んだくれのシューターと出会う。

戸口の通過

バスケのシーズンが始まる。

最も危険な場所への接近

ノーマンの戦術は伝わらず連敗。自分に歯向かう選手は使わないノーマンに街の人々は不満が溜まっていく。

補佐をしていた校長が体調を崩し、シューターを補佐にするノーマン。シューターはプレッシャーでまだ何もできない。

最大の試練

ノーマンの不信任動議が起こり、投票が行われる。

ノーマンは大学コーチ時代に暴力事件を起こし追放されたことを突き止めるマイラだが、シューターやジミーへの振る舞いに感動し、ノーマンを支持する。

さらにジミーもノーマン残留を条件に復帰すると約束する。ノーマンの残留が決まる。

報酬

戦術が浸透し、ジミーが加わったことで快進撃が始まるチーム。シューターの指示で勝利し、息子はシューターを見直す。

帰路

地区決勝トーナメントまで進んだチーム。シューターは再び酒を飲んでしまい、試合に乱入。病院に入院することになる。州決勝に駒を進める。

復活

マイラと心を通わすノーマン。シューターの息子は退院したら一緒に暮らそうと約束する。

州決勝が始まり、チームは一丸となって戦い、勝利する。

宝を持って帰還

体育館に飾られたノーマンたちの優勝記念写真。

映画『勝利への旅立ち』のテーマ

この映画に登場するキャラクターたちはみな人生の敗北者たちです。

ノーマンは暴力事件を起こし追放。マイラは大学院まで行ったものの嫌っていた田舎に戻ってきてしまった。シューターは酒で妻と息子を失った。ジミーは前任コーチを失い、バスケをやめた。

しかしノーマンは立ち上がり、やり直しを始め、最後はチームが一つとなって栄光を勝ち取ります。

人生は何度でもやり直せる 』。

これがテーマです。

人と人との繋がりが、心を立ち上がらせる力になる。5人で行うチーム競技のバスケはテーマと合致したいいモチーフですね。

スポーツもので大事なことはしっかりと人間ドラマを描くことです。

試合展開や専門用語などはなるべく使わず、勝利や結果、行動でキャラクターの成長を表現し、感動を生み出すのです。

映画『勝利への旅立ち』をさらに詳しく

『ヒーローズジャーニー』ともう一つ大切な要素『三幕構成』を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
夜明け前に走る車。タイトル。ノーマンが運転している。バスケをしている人々。

ゆったりとした音楽と共に、物語が始まる夜明けで始まるオープニング。穏やかに映画の中の世界へと導いていきます。バスケがモチーフであり、人々もバスケをするほど好きなのでさらっと提示。

どこかに何日もかけて向かう男、というだけでこの人が主人公なんだろうな、と観客は予測できますね。

高校に着き、数々のバスケのトロフィーを見せたところで導入は終了。終業のベルで物語がスタートします。

ノーマンが初めて会話する町の人間はマイラ。決して受け入れているわけではない感じの悪いやりとり。二人の恋物語は最初から始まっています。

続いてノーマンが初めて出会う選手はジミー。重要なキャラクターは最初に出会わせることで印象付けています。かといって過度に演出するわけでもないのがいいですよね。

校長がノーマンに教える形でジミーの特別な才能を観客にも説明します。

舞台となる町の人々の反応も説明。アウエーの環境は面白さを作る定番の設定です。部員を早速二人追い出し、4人半でスタートするチーム。障害は多ければ多いほど面白くなります。

オリーの自虐を交えた自己紹介は伏線。自己紹介と同時に伏線を張らせるのは印象にも残り、かといって無駄な手間を省いている、と上手いですね。

田舎町にとって本格的な練習は理解されない、しかし一部の人間は味方してくれることで受け入れる予感をさせます。

シューターもまた特別なキャラクターなので、ワンシーン使ってシューターを登場させます。素行が悪い、家庭環境、選手の父、元バスケ選手と必要な情報を全て説明しています。

ジミーを守るためにノーマンに徹底して対立するマイラ。バスケや田舎に対する自分の思考を存分に発揮するシーンですね。対立することは自分の考えを表現することであり、キャラクターを表現させるために重要な関係です。

ジミーを出せと訴える観客に対立し演説するノーマンの行動も、ノーマンを表す素晴らしいシーンです。

シーズンが始まる。これが第一ターニングポイントです。

試合中でも自分の指示を聞かない選手を人数不足でも使わない。一般人にとってはありえないようなことでも、自分の中では理屈の通った行動をする。これもキャラクターを表現している行動です。

第二幕

マイラの家に招待され、少しだけノーマンとマイラの距離が近づく。過去や秘密を相手に公開すると、自然と二人の距離は近づいていきます。

乱闘を起こし試合は荒れ、味方であった校長も病に倒れてしまう、とさらに障害が増えるノーマン。しかしシューターが新たな補佐となり、戦術が少しづつ選手に理解されていくなど希望も見えてきます。

シューターの成長物語が本作のサブストーリーですね。

二幕の前半でノーマンを追い詰め、二幕の半分・映画の半分のところで生きるか死ぬか、最大の試練となる町の投票が行われます。

ノーマンの留任・ジミーの復帰が決まり、二幕の後半は快進撃をするチームを描いていきます。

ジミーの心境の変化は描かれていませんが、描かなくてもこれまでのノーマンを見ていたならわかりますよね。

ノーマンがわざと退場し、シューターに試練を与える。たじろぐシューターにきっかけを与えて導く息子、とても感動します。

ここでシューターは生まれ変わったように見えますが、実は見せかけの勝利。サブストーリーの『最大の試練』と『報酬』であり、再び酒に溺れてしまうことが『帰路』の展開ですね。

シューターの物語にとってのサブストーリーは息子がシューターとの関係を再び築けるか、となっており、シューターが堕ちることで息子も荒れて怪我をしてしまいます。基本に忠実、上手くできていますね。

伏線だったオリーの活躍で州決勝に進出。これが第二ターニングポイントです。

天才ジミー、小柄なオリー、最初にノーマンの指示を無視したレイド、クリスチャンのストラップ、シューターの息子エベレット、ガムをかんでいるバディ。それぞれの選手に少しだけでも特徴を与えて、生きているキャラクターにしています。

第三幕

試合とドラマのシーンを交互に進めているのでシーンに振れ幅があって面白いですね。

マイラとのラブストーリー、シューターと息子の物語も終わらせ、最後の試合へと向かいます。

シューターの息子が去った後、涙を隠すように看護婦に叫ぶ演技、素晴らしいです。

試合前の静まり返った体育館、控室。前振りが熱狂する試合と対比となって高まりますね。

試合終盤。最後の指示をするノーマンでしたが、選手の心を読み取り、指示を変えて送り出します。

自分の考えが絶対だったノーマンですが、ノーマンもまた変化をしました。

ラストシーン。物語が終わる夕暮れ。バスケをしている子どもと記念写真。奇跡の勝利をしたチーム。歴史はいつまでも残り、次の世代まで語り継がれます。

さいごに

これぞ!と言えるほどの超王道のスポーツ物語。シンプルなストーリーだからこそ深い感動を呼び起こします。本当に素晴らしい映画でした。

次回は逆にかなりアブノーマルなスポーツものの傑作、『スラップショット』を研究します!

お家映画をもっと楽しくしたい人は、ぜひコチラの記事も読んでみてください。

ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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