サスペンス

映画『狼たちの午後』の解説(ネタバレ有)アル・パチーノに降りかかる「信頼と裏切り」の物語

狼たちの午後
akira
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こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

今回の深掘り映画は『狼たちの午後』です。

狼たちの午後

1975年公開のサスペンス映画。
監督シドニー・ルメット、脚本フランク・ピアソン。125分。

第48回アカデミー賞脚本賞受賞。英国アカデミー賞ではアル・パチーノが主演男優賞を受賞しました。

アメリカ映画の名セリフベスト100では、ソニーの「Attica!Attica!」が86位に選ばれています。

実際にあった事件を元にしており、本当の犯人も同様に恋人の性別適合手術の費用のために強盗、そして失敗、逮捕されていましたが、映画の収益の一部を供与され、その費用を恋人にプレゼントすることが出来たようです。

なんだかすごい話ですね。

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映画『狼たちの午後』が観られる配信サービス

この記事はネタバレも含むので、1度観てから一緒に考察していくのがおすすめです。
下の表から自身の使っているサービスで観られるか確認してみてください。

配信状況

サービス配信状況配信種別
U-NEXT定額 ※1
Prime Videoレンタル ※2
NETFLIX×
Hulu×
Disney+×
TSUTAYA DISCAS ※3定額 ※1

※1 定額は毎月支払うサービス利用料内で観ることができる見放題作品です。
※2 レンタルは見放題作品に含まれておらず、別途レンタル料が発生します。
※3 TSUTAYA DISCASは宅配レンタルサービスです。

この記事の情報は、2023年12月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。

個人的にオススメのVODサービスは、取り扱っている作品数が段違いなU-NEXT

U-NEXTはトライアル期間が1ヶ月あるので、使い心地を自分で実際試せます。まだ使ったことがない人は、ぜひこの機会に試してみてください。

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映画『狼たちの午後』のヒーローズジャーニー

それでは、映画の流れがヒーローズジャーニーの法則に沿って進んでいくのかみていきましょう。

ヒーローズジャーニーって何?

という方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界

真夏。
ブルックリンの午後。

冒険への誘い

ソニーとサル、青年が銀行強盗に入る。
青年は怖気付き去っていくが、警察にも気づかれず誰も傷つけず計画を終えようと準備してきたソニー。従業員たちも素直に指示に従う。

冒険の拒否/賢者との出会い

警察に周囲を囲まれてしまう。銀行の従業員を人質に立て篭もるソニー。

戸口の通過

警察と交渉を始めるソニー。

試練、仲間、敵

ジェット機を用意させ、外国に逃げることを考えるソニー。
恋人も呼び出すように要求する。

最も危険な場所への接近

膠着状態が続く。

最大の試練

裏口で動く警察官に気づき、銃を撃つソニー。

報酬

ジェット機と飛行場までのバスを用意できたと知るソニー。恋人のレオンも現場につくが、ソニーが怖いと対話を拒否する。

帰路

レオンと電話をするソニー。レオンは別れを告げる。
ソニーの妻・アンジーとも電話するが、まともな話はできず激怒するソニー。ソニーの母親も現れアンジーやレオンを罵る。

復活

用意されたバスに従業員らと乗り込むソニーとサル。
飛行場に着き安堵した瞬間、サルは撃ち殺されソニーは捕まる。

宝を持っての帰還

連行されていくソニー。
従業員たちはみな無事に帰っていく。

映画『狼たちの午後』のテーマ

ソニーと仲間たち、ソニーと銀行の従業員、ソニーと警察、ソニーと家族、ソニーと妻・アンジェラ、ソニーとレオン、世間と警察。

全ての関係の中に通ずるテーマが

信頼と裏切り 』

です。

それがなくなった世の中は、作中に何度も登場するセリフから引用すると、まさに「狂ってる」。

映画『狼たちの午後』をさらに詳しく

ヒーローズジャーニーとは別に、もう一つ大切な要素が『三幕構成』。
三幕構成を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
軽やかな音楽とともにブルックリンの午後。ソニーの家族も登場しています。

そして閉店間際の銀行に入るソニーたち。
初めからソニーに同情させるのではなく、ソニーを知っていくことによってソニーに同情させるようにしています。なぜならばソニーは強がってみせますし、銀行強盗をする人間は悪くて人殺しもいとわないように思えますが、ソニーは本当は弱いキャラクターであり、その意外性が今作の魅力の一つだからです。

そしていきなりトラブル発生。仲間の一人がおじけづき、逃げていきます。ソニーはいきなり仲間に裏切られました。

それでも懸命に計画を進めるソニーたち。

本当の現場をもとにしているのかわかりませんが、銀行の間取りが良いですね。奥行きがあって動きをつけやすい構造になっています。

そしてほとんどのシーンがアドリブで作られているそうです。
この後の野次馬の反応もそうですが、ドキュメンタリー風なトーンは人間味があってとても良い演出ですね。

調査不足で銀行には少しの金しかない。悪い言葉遣いをすると従業員に注意される。ショットガンを出す時にもリボンが引っかかってしまう。

細かいところにソニーの本性が見えます。

あっさりと警察に包囲され、ソニーが支店長らに説教されるのも面白いですね。普通に思いつく強盗と人質の関係が逆転しています。

さらにジェニーの夫からの電話を渡し、的外れな質問。ユーモアたっぷりです。

裏口を支店長にふさがせるシーンで、ソニーが「俺たちを裏切るなよ」と忠告します。
テーマを象徴するセリフで、信頼があれば目標が達成されると信じています。

また、この期におよんで亭主や子どものいる女性を撃つと新聞に叩かれるなど、ソニーは体裁を気にしています。
本質を考えず、表面だけで信頼するソニーの欠点です。それは同性愛者として生きてきたからこそ生まれてしまったものかもしれませんが。

状況を打破すべく表に出て警察と交渉を始めるソニー。
これが第一ターニングポイントです。

第二幕

「アティカ! アティカ!」と叫び、野次馬を味方に付けるソニー。

ちょうどこの時期にあった「アティカ刑務所暴動」が起き、世間が警察への信頼を失っていました。それを指摘するソニーに群衆は信頼し、ソニーの味方につきます。

テレビに電話出演するソニーはあっさりとメディアとの信頼関係が切れてしまいました。

そのまま続くサルとソニーの会話のシーン。
ここでサルはソニーに怒りをぶつけ二人の信頼関係が危うくなるますが、ソニーはジェット機を用意させ逃げることを思いつき、サルを納得させます。

最初はカウンターごしの会話。
つまりカウンターが対立や壁を示していますが、最後は壁がなくなり隣同士で終わる。役者の動きや立ち位置でキャラクターの信頼関係を表していますね。

映画の半分のあたりで、初めて銃声がなります。

モレッティはしらばっくれていますが、もちろんそんなわけはなく、警察とソニーの信頼関係はみせかけのものです。

一触即発の関係をバス等の交渉の話に移行し再び信頼関係を取り戻させ、食べ物の要求で終わり次のシーンへとつながせる。ワンシーンの中で変化させて話を進める。すごいですね。

昼から夜に変わる夕方に、レオンが登場することでソニーの過去が明らかになっていき、ソニーへの見方が変わります。その後同性愛者の集団も現れ、ソニーと群衆との信頼関係も変化していきます。

時間もまた計算されていますね。

従業員たちとくだけた会話をしている最中に停電。FBIのシェルドンが現れることで緊張感のステージが一つ上がります。

シェルドンはサルを始末すると言いソニーとサルの信頼関係を崩しにかかりますが、ソニーは受け入れません。

外部にいる警察との問題はいろいろな種類が思いつきますが、内側からの問題を自然に作り出すことはなかなか難しいです。

警備員の喘息と支店長の糖尿病、どちらも原因が病気の悪化と被っていますが、仕方ないですね。

そしてレオンとの電話、アンジーとの電話、母親との対話。

映画の始まる前から、ソニーと身近な人々の信頼関係はすべて終わっていたものでした。

レオンとの会話では、ソニーは関係を修復したい。
レオンは自分の無実を証明したいとお互いに目的があるので駆け引きが生まれて面白いですね。アンジーのソニーに屈せずにしゃべり続けるキャラクターもとても良いです。

みな固定電話という動けずにしゃべるだけの演技ですが、見入ってしまいます。

バスが到着し、人質を連れて外に出る。
これが第二ターニングポイントです。

遺書を残し覚悟を決めることも、内面のターニングポイントと捉えられますね。

第三幕

バスの陽気な運転手は実は刑事だった。
途中にあったピザの配達員と同じ展開にならないようにひねりが加えられています。

そして最後はもちろんFBIに裏切られ、サルは死に、ソニーは捕まります。

銀行強盗の映画ですが、劇中たった二発しか銃が撃たれませんでした。

捕まったソニーを一瞥もせず帰っていく従業員たち。ソニーは彼らを信じていましたが、従業員たちのソニーへの信頼は上っ面だけのものであり、本当に固い信頼で結ばれた支店長と従業員たちは誰も欠けることなく帰路につくことが出来ました。

さいごに

シリアスな展開の中で、少し滑稽さも窺えるキャラクターたち。しかし切れ味の良い衝撃的なクライマックス。素晴らしい作品でした。

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一つ目は監督脚本を手がけた『ユー・ガット・メール』を研究します!

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-fin-

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ABOUT ME
akira
1990年生まれ。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」をスタート。 生粋のリバプールファン。
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