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映画『ミッドナイト・クロス』の解説(ネタバレ有)矛盾した演出が感動を生み出すデ・パルマ初期の傑作

ミッドナイト・クロス


こんにちは。
akira(@akira_movielabo)です。

第16回の movie labo は『ミッドナイト・クロス』です。

ミッドナイト・クロス画像引用元:ⓒ フィルムウェイズ・ピクチャーズ

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コロムビアミュージックエンタテインメント

1981年公開のサスペンス映画。監督・脚本ブライアン・デ・パルマ。108分。

ブライアン・デ・パルマ監督がミケランジェロ・アントニオーニ監督の『欲望』からインスパイアされて製作した作品。

タランティーノ監督はこの作品を観て、ジョン・トラボルタを「パルプ・フィクション」に起用したそうです。

クライマックスの花火のシーンは映画の中で最も美しい一瞬だと思っています。

映画『ミッドナイト・クロス』のヒーローズ・ジャーニー

それでは今回もヒーローズ・ジャーニーを見ながら解説していきます。
「ヒーローズ・ジャーニーって何?」いう方はこちらの記事をどうぞ。

ヒーローズ・ジャーニー
『ヒーローズ・ジャーニー』とは。映画研究の準備 こんにちは。 akira(@akira57746363)です。 今回の『movie labo』は前回に引き続き導入編です。 ...

日常世界

B級映画の音響係のジャック。新作映画の新しい音の素材と悲鳴の声を探さなければならない。

冒険への誘い

ミッドナイト・クロス画像引用元:ⓒ フィルムウェイズ・ピクチャーズ

橋で音の素材を集めているジャック。目の前で車がパンクし川に転落。ジャックは車内にいた女性・サリーを救出する。

冒険の拒否

病院で警察に事情を話すジャック。事故で次期大統領候補の知事が亡くなったと知らされる。

知事の参謀から遺族のことを考え、サリーのことは隠すように指示される。渋々納得するジャック。サリーとともに病院を出る。

戸口の通過

事故当時の音源を聴き直し、銃声の後に事故が起きたと確信するジャック。

試練、仲間、敵

犯人のバークは事故車両の証拠を隠蔽する。

ジャックはなぜ知事の車に居たのか聞くと、怒るサリー。ジャックと再会することを約束し、サリーと別れる。

事故をテープに収めたカープという男が現れ、雑誌にコマ送りの写真が載る。

最も危険な場所への接近

サリーと再会するジャック。サリーは参謀から街を離れるように言われたと話す。
ジャックは真実を暴くと決意し、サリーを説得。サリーも協力を決意する。

最大の試練

バークはサリーによく似た女性を間違って殺す。
バークは異常者の犯行にしようと遺体に細工を施す。

報酬

雑誌の切り抜きからフィルムを作り、音と合わせて銃の光を見つけるジャック。

帰路

しかし警察は事故と説明し話を聞いてもらえない。

本物のフィルムを手に入れようとカープの職場を訪れる。カープとサリーは浮気を捏造し金を稼いでいたことを知るジャック。
さらに警察に渡したフィルムも元の音源もバークに消されてしまう。

テレビの有名司会者のフランクがジャックの話を信じ、テープを渡して欲しいと話す。
しかしそのやり取りをバークは盗聴し、バークはフランクになりすましてサリーとテープを誘い出す。

復活

ミッドナイト・クロス画像引用元:ⓒ フィルムウェイズ・ピクチャーズ

誰も信じられないジャックはサリーに盗聴マイクを仕掛ける。
バークと会うサリー。バークはテープを海に捨て、サリーを襲う。

サリーを助けに向かうジャック。バークを殺すが、サリーはすでに事切れていた。

宝を持って帰還

録音したサリーの最期の言葉を聞くジャック。
サリーの悲鳴を探していた映画の音源にする。

映画『ミッドナイト・クロス』のテーマ

『ミッドナイト・クロス』のテーマは

 

真実を明らかにすることで生まれる犠牲

 

ジャックの職業は映画の音響係。

撮影された時の音ではなく、後から別に録った音を映像に重ね、本物のように見せる。つまり真実ではなく嘘を見せる仕事。

冒頭では、酷い悲鳴にもかかわらずそのまま使おうとして、監督に否定されます。

そして本編では、政府が仕組んだ暗殺を明らかにしようとする。

ジャックは便利な嘘よりも真実を重要視するキャラクターです。
しかし真実を明らかにしようとすると、犠牲が生まれてしまうこともあります。

酷い悲鳴は役者自身の本物の声を、そして暗殺を明らかにしようとして、サリーの命を失ってしまいます。

映画『ミッドナイト・クロス』をさらに詳しく

「ヒーローズ・ジャーニー」ともう一つ大切な要素「三幕構成」を用いてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
心臓の音が聞こえてきて、女子寮を襲う殺人鬼のサスペンス溢れるワンシーン。

映画の名刺がわりであり、アクションで観客の心を掴むシーンです。

「音」が最も重要な映画なので、このシーンでも様々な音が混ざっていて面白いです。
殺人鬼視点でのカメラワークも緊張感を高め、引き込ませます。

続いて、それを見ているジャックと監督のシーン。

ジャックの職業を説明するとともに、悲鳴の伏線、次のシーンに続く風の音を録るようにという指示が組み込まれています。

様々な音のテープを作るジャックと、テレビのニュース映像。

ジャックの技術とともに知事の説明を同時にしています。

どちらも今後のために説明しなければなりませんが、それぞれワンシーンずつ使うと長くなってしまい退屈になりがちです。
画面を分割して同時に見せるのはブライアン・デ・パルマならではの演出だと思います。

そして事故のシーン。
一目散に救出に向かうジャックに強い正義感と行動力があると分かり、好意を持ちますね。

悪役のバークにも「音」に関連したクセを付けているのはさすがです。

病院でサリーと会話するシーン。
サリーの不思議な性格と、ジャックの優しさを感じるシーンです。

明らかに2人のラブストーリーが始まると分かりますが、とても悲しく思える音楽が流れます。
この音楽はサリーとのシーンで何度も使われ、クライマックスの伏線になっています。

ジャックは音を聴き直し、銃声があったと確信する。
これが第1ターニングポイントです。

この映画に「賢者との出会い」に当てはまるものは無いのかな、と思います。

第二幕

暗殺と分かった直後に、バークの偽装工作のシーンに続きます。ジャックの勘違い・単なる事故ではないと明らかにしています。

翌朝のサリーとの会話のシーン。サリーの素性の説明。それまで良い関係でしたが、ジャックがサリーに知事との関係を聞いた瞬間にサリーは怒ります。

しかしシーンの最後に再会する約束をして後の展開に続くようにしています。

カープの登場により、映像という新たな情報が出てきます。
映画に携わるジャックならではの技術を使い、徐々に真実に近づいていきます。

映画の悲鳴探しは、ラストの伏線とともに笑いを誘い、映画の中で緩急をつけています。

サリーとの喫茶店のシーン。
ジャックの警察時代の過去をサリーに話します。

重い過去を話すには少し急な感じもしますが、好意を持つサリーの頼みは断れないジャック。そしてここもクライマックスに向けての伏線になっています。

サリーはジャックに協力すると決め、ジャックも納得するまでやると決意します。

その直後、サリーを狙ったバークの殺人シーン。

失敗すれば命の代償が支払われる。リスクを明らかにし、この事件の危険度を示し、緊張感を高めます。

こういった企画では警察をどう扱うかという問題があります。ドラマの都合のいいように描くと腑に落ちないものに見えてしまい、緊張感が無くなります。

警察は事故として扱う・ジャックは警察の内部調査をしていた、という2点でジャックの味方にならないようにしています。

職場でテープを探しシーン。
室内を回転しながら撮っていますが、これもクライマックスの演出の点での伏線になっています。

真上からの映像であったり分割や合成を使ったりと、様々な映像の演出があるのも面白いですね。

フランクに扮したバークと会うサリーに盗聴を仕掛けると決めるジャック。
これが第2ターニングポイントです。

第三幕

バークとサリーが出会い、テープを海に捨て、サリーを襲います。

盗聴していたジャックが車を飛ばして助けに向かう。

クライマックスに向けてアクションシーン、祭りの真っ最中と、テンションを盛り上げていきます。

そしてジャックはサリーの元へ。
バークを殺しますが、サリーには間に合いませんでした。

とても悲しいシーンなのに、美しい音楽、そして華やかな花火。
矛盾しているからこそ、とても印象的なシーンになっています。

倒れたサリーを見る瞬間も、ジャックの方向の視点から映しているのも面白い。

「サリーは無事か」とジャックと観客の心がシンクロしているからこそ、より響いてきます。

ラスト。
残されたジャックは何度もサリーの声を聞き、その悲鳴を伏線だった映画の悲鳴に当てます。

職業としてのジャックはサリーの悲鳴を素晴らしいと語っていますが、本心のジャックでは悲鳴が忘れられず、こめかみを押さえるという行動がそれを表しています。

さいごに

『欲望』は写真という「絵」を使った映画なので、本作は「音」を中心に物語を膨らましていったのでしょう。

ラストは賛否両論あるようですが、個人的に素晴らしい終わり方でした。

次回は『アド・アストラ』でも主演、そして現在公開中の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でのブラッド・ピットがカッコよすぎたので、ブラッド・ピット主演、ロバート・ゼメキス監督の『マリアンヌ』を研究しようと思います。

マリアンヌ
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– fin –

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1990年生まれ。SNSとは無縁の人。 映画を、物語・シナリオの側面から深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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